今回はウィメンズブランドKÄÄPIÖ(カピエ)を手がける才能溢れるデザイナー大島 郁(おおしま・かおる)さんをご紹介。セントマーチンズ卒業後、パーソンズの大学院で学びその後はラルフローレンのブラックレーベルでデザイナーを務めた華々しい経歴を持つ彼女。KÄÄPIÖは2014年に大島さんが創立したニット中心のレディースブランドです。まずは2019春夏コレクションの一部をみていきましょう。

KÄÄPIÖ Spring/Summer  2019

ーKÄÄPIÖ2019春夏コレクションはどのようなコンセプトがあるのでしょうか?

今期のコレクションのテーマはスポーティーシックです。パンツにもスカートにも合わせられる、一枚でもさらっと着れるようなものを目指しました。今までは生産背景と春夏にやりたいものを一致されることが難しかったのですが、ちょうど2018年から生産背景を一新したんです。より特化したものづくりのために工場を分けて、各工場ごとに得意な分野を生産してもらえるように依頼したんです。

ーコレクションのなかで特に時間をかけたものはありますか?

マルチカラーストライプスカートですかね。これ全部インターシャなんです。糸が途中で切り替わり、それが裏表両方綺麗に縫い付けていくんですが、これはとても時間がかかるんです。1日1枚とか、そのくらいしかつくれないですね。立体感と色の組み合わせを意識しました。これは、コレクション全体が引き締まるような、コレクションの顔ともいえる作品だと思います。

 

マルチカラーストライプスカート

シルエットが美しい、アコーディオンプリーツのマルチカラーブロックのスカート。動きによって、プリーツの色の表情が変化する。マルチカラーを採用しているため、幅広い色のコーディネートが可能で、スポーティーにもエレガントにもスタイリングできるスカート。

アシメントリーコットンニットTシャツ

「さらっと1枚で着れるTシャツが欲しい」そんな声から生まれた、ニットTシャツ。コットン100%のミラノリブと柔らかくしなやかなジャージーをドッキングすることで、涼し気でありながら、立体的なシルエットを作り出した。

コットンカシミヤパーカー

イタリア製コットンカシミヤの糸にコットンテープの糸を交差させて編み立てたニットパーカー。ニットでありながら、ダレない編み方をしており、立体的なパーカーに仕上がっています。

甘くなりすぎないシルエット。女性の生き方に寄り添った服づくりを

ーそれでは、KÄÄPIÖというご自身のブランドについて教えてください。

はい。帰国してから、企業に入ることも考えたのですが、ニットってまだまだ日本のファッション業界のなかで添え物という感じの立ち位置だと感じていて、デザインもののニットが普及していないのかなと。そこで、デザインニットを扱ったブランドを自分自身でつくりあげたいとおもい、KÄÄPIÖを創立しました。

ーニットをデザインするうえで意識していることはありますか?

同じ体型の人っていませんよね。肩幅が狭かったり広かったり、体型によっても似合う洋服は変わってきます。大量生産のものは万人受けするデザインではあるけれど、誰にも完璧に似合うものはないと思うんですね。だから私は、本来あるべきその人の体系の美しさを最大限引き出せるような洋服をつくることをポリシーとしています。そのために、その素材が一番綺麗にみえる形、その素材が持つ特徴、デザインとのバランスなどを意識しています。

ーKÄÄPIÖはレディースブランドですが、女性に向けてどんなコンセプトで洋服をつくっていますか?

女性の体のラインが綺麗にみえるようなニットをデザインしています。それが、「色、素材、シルエットのバランスを追求し、アイテム1枚だけでスタイルと確立できる、そんな美しいニット」なのです。また、ニットですので、着心地の良さは意識的に追及して企画しています。働く女性が活躍する昨今だからこそ、ストレスフルな毎日のなかで幸せを感じられるようなニットを着用してもらいたいですね。更にそれが、一枚でもさらっと着ることができて、なおかつスタイルを確立できるものであれば、毎日のお洋服に取り入れたくありませんか?アイテムはニットが中心ですが、スタイリングしやすいようにトップスとボトム、カーディガンとワンピースなど、お客様の身長や体型を想像しながらつくっています。

デザイナーになるまでの経歴

ーそれではここで、大島さんがデザイナーになるまでの経歴を教えてください

父が美術関係の仕事をしていて、パリのエトワールで日本人作家さんの展示会のカタログづくりなどもしていました。そういったこともあり、物心ついたときから美術館へよく通ったりと、小さいころからアートやファッションが身近にあったんです。その後普通の四年生大学で法律を勉強していたんですが、四年生のときに交換留学でイギリスで1年間学び、そこで仕事への考え方が変わったんです。

ーイギリスと日本ではどのような違いがあるのでしょう?

イギリスの学校では広いところから自分に合ったものを見出し、焦点をあてて専門的に勉強していく形でした。学んでいくなかで自分の強みを見つけていくというやり方は日本にはないものだと感じました。そういう学びの文化に感銘を受け、父の仕事のことや、叔母が昔から輸入生地の洋服コレクターであったこともあり、交換留学を終えたと同時にセントマーチンズ美大コースへの入学を決めました。最初は写真やデッサン、本の装丁などもかじり、その後はテキスタイルのコースで織物とプリント、ニットを勉強しました。そのときにニットのデザインに心を持っていかれたんです。

ー他とは違うニットの魅力とは?

そうですね、ニットは作りながら立体的にもしていけるんです。最終的な形状を素材からデザインして作れるというところに惹かれましたね。テキスタイルはもう即に素材ができているけれどニットの場合素材からつくる必要があります。形と素材のバランスがとても大切で、難しくはあるけれど実現できればとても着心地の良いものになります。

ーその後、セントマーチンズ卒業コレクションのコンペではイギリス全土の大学のなかで優秀な4人に選ばれたとお聞きしました!

ありがたいことに、ポールスミスやダイアンフォンファステンバーグ(以下DVF)などがスポンサーをしているコンペのニット部門で選んでいただきました。パリのプリミエルヴィジョンという展示会で発表させてもらい、DVFにも作品を納めさせていただいたんです。その後は、イギリスのさまざまなファッションブランドとコラボをしたり、ファッションショーにフリーランスとして、ニットドレスをデザイン提供したりしていたんですけど、セントマーチンズ3年時に習った先生がNYのパーソンズの大学院でディレクターになったと報告がありまして。ちょうどその年はパーソンズの大学院が開校した年で、懇意にしていた先生に声をかけてもらったこともありパーソンズ大学院への入学を決めました。

Parsons 大学院の2年の時に発表した、イタリアの糸メーカーとのプロジェクトの制作工程

ーセントマーチンズではニットデザインを学んでいたと思いますが、パーソンズではどのようなことを学んだんですか?

特に深く学ぶことができたのは、自分自身、または自分の作品のブランディングというところですね。作品だけつくっていても、外の方から見てもらうときに、自分自身が見えているようには見てもらえません。自分の見えている視点を外の人にも持ってもらうために、ブランディングというのが必要になっていきます。どう自分自身と自分の作品をプロデュースしていくか、講義では毎回問われました。そこで、自分の作品はどんな力を持っているのか、その力は他の人とどう違うのかというところを意識するようになりましたね。

ーパーソンズ時代にイタリア糸メーカーロロ・ピアーナ社とコラボしたということですが、その時の経験を聞かせてください。

ロロ・ピアーナはカシミヤ最高峰のメーカーで、ご縁があってお声がけいただきパーソンズ卒業コレクション制作のために北イタリアにある同社の工場で一か月以上滞在させてもらったんです。そこでは日本の島精機が使われていて、すごく感慨深かったですね。工場ではイタリアの人との会話がうまく出来なかったんですが、(島精機の編み機が使われているため)編み記号が日本の記号を使用していたんですね。記号を指さしてここがおかしいとか、ここを変えたら綺麗になるとか、そういう風にコミニュケーションの助けになっていたのが面白いなと今でも思います。

 ロロ・ピアーナはカシミヤメーカーでありますが、シルクも素晴らしい糸を使っているので、卒業制作はシルクを使用しました。ロロ・ピアーナ社が私とコラボをしてくださったのは、若い力を取り入れて刺激を受け、更なる成長を望んだためだったと言います。そんなこともあり、今でも作品の一部にロロピアーナ社の糸を使っているんです。

ーパーソンズ卒業後はラルフローレンのブラックレーベルに就職されたとお聞きしました。

そうですね。お世話になったロロピアーナ社の方がラルフローレンにも糸を納めていて、その方のご紹介で働かせてもらえることに決まりました。就職後はメンズのテキスタイル開発やデザインなどをしていました。ただ、在籍途中に体調を崩し、日本へ帰国することを決めたんです。そしてしばらく休養期間を設けたのちにKÄÄPIÖを創立し、今に至ります。

これからのこと

Parsons大学院の卒業プロジェクトでの作品

ーデザイナーとして華々しい経歴をお持ちの大島さんですが、今後KÄÄPIÖのデザイナーとして目標はありますか?

やっと、こういった風にコレクションラインとうか、デザイン性の高いものをつくっていけるようになったので、少しずつシーン別でのコーディネート提案をしていきたいですね。もちろんメインはニットでやっていきたいと思うので、今後更にニットに強いブランドとして打ち出していきたいです。私自身中学生のころに父がパリのお土産で買ってきてもらった服をいまだに着ているんです。デザイン性というか、服自体のバランスが計算されてつくられたものは、長く着続けられると思うんです。それが自分に一時的に似合わなくなる瞬間はあるけれど、持っていると時間が経ってまた着られるようになったり。そういう部分がファッションの楽しさであると思います。より長く「100年後も着られる服」をつくっていくことがKÄÄPIÖの目指している部分なので、そこは変わらずに追い求めていきたいですね。

 

流行のデザインが大量生産される世の中。そんななかで、常に素材の持つ美しさとバランスを考え、女性の生き方に寄り添いいつまでも着れる洋服づくりをおこなってきた大島さん。KÄÄPIÖの洋服のもつ不変的な温かみが、これからも人びとに自分が着たい服を選択して生きていくことの意味を提示し続けていくでしょう。

 

大島 郁(おおしま・かおる)

セントラルセントマーティンズ芸術大学テキスタイル学科卒業後、NYへ渡米。パーソンズ芸術大学大学院ファッション学科に在学し、卒業コレクションをロロピアーナ社のスポンサーのもと、2012年にNYファッションウィークで発表。在学中からDiane Von Furstenbergで経験を積み、卒業後はRalph Lauren Black Labelのデザイナーとして活動。

HP:https://kaapio.com/

 

KÄÄPIÖのPOP-UP SHOPが続々とスタート

今シーズン、KÄÄPIÖは2018-19秋冬コレクションを取り揃え、続々とPOP-UP SHOPをスタートしています。今シーズンのテーマは「ノスタルジー&モダン」。様々なスタイリングシーンを追求し、高い技術とオリジナリティ溢れる発想で生み出されたニットのコレクションを、ぜひご堪能ください。

<POP-UP SCHEDULE>

・松坂屋名古屋店 本館1F(北入口イベントスペース) 2018/10/10(水)~16(火) 愛知県名古屋市栄3丁目16番1号

・日本橋三越本店 本館3F(イベントスペース東) 2018/11/14(水)~27(火) 東京都中央区日本橋室町1丁目4番1号