若手ブランドが目まぐるしく登場する今、新たに東コレに初出場を果たしたFumiku(フミク)。ガーリーテイストと構築的なパターンで一癖ありつつも、リアルクローズを意識したデザインで早くも市場での注目はアツい。そんなデザイナーの林 史佳に、ファッションの道を志した理由から今回のコレクションまで深く追求する。

ブランドデザイナーになるまで

―まず始めに林さんがファッション業界を目指したきっかけを教えて下さい。

私、元々ファッションに関わる仕事がしたいというよりも、モノが作りたいという想いが強かったんです。そこで、何を作ろうかなって考えた時に、身近で人に影響を与えられるものが良いと思って。あとは、形に残したいという気持ちもあって、料理とか音楽とかじゃなくて服を選びました。あとは母親が洋裁をしていたこともあって、服が形になるまでの工程もイメージしやすかったんですよね。

 

―デザイナーになりたいという意識はいつぐらいから?

中学生の頃くらいですかね。当時、文化祭のために衣装を作ったんですよ。それが案外楽しかったのも大きいと思います。デザイナーっていう職業が、その時から未だに何なのかよく分かっていないんですけど、漠然となりたいなと思って。その後、高校を卒業してバンタンに進み、服作りを学びました。

 

―バンタンを卒業後すぐに、個人のブランドとしてコレクションを発表されましたね。とても早いデビューだと思うのですが、それは何故?

デザインするのが、やっぱり好きだったからでしょうね。1回就職して経験を積んだ後にブランドデビューする方が多いとは思うんですけど、私には就職するという選択肢がさらさら無くて。迷いもせずに、ずっと突き進んでいるような感じです。 だって、10年後何があるか分からないじゃないですか。生きているかも分からないし。だから、やりたいことを今やっちゃおうって。

2018年に誕生したFumiku

―ブランドコンセプトはどのように決められたのでしょうか?

Fumikuは「リアルとファンタジーの間の世界を表現し、新しい人物像を提案する」というコンセプトで行っています。現代の社会性が重要視されている世の中を見て、みんな生きていて感情の浮き沈みがあんまり無いように感じられたんですね。だからこそ、非現実的な『進撃の巨人』や『東京喰種』のようなグロテスク要素を含んだ作品がヒットしたり、ネットでは海外で起こった残酷なニュースを見て楽しんでいるような感覚の人が居るのかなって。そういうのが私は凄く嫌に感じて、服でこの日常にちょっとした刺激を与えられるような服を作りたいと思いました。けれど、リアルさも求めないと多くの人には手に取ってもらえない。だから、現実と非現実の間を求めて。ファンタジーって言い換えているのは、重たい言葉を少しでもキャッチ―に変えているだけなんですよね。

 

―どのようなものからデザインのインスピレーションを受けることが多いですか?

何かの映像や景色よりも、本を読んで思考からデザインすることが多いですね。ビジュアルを見てデザインするっていうのは、そのままになってしまうから逆にやりづらいんですよ。だから、こういう世界のものを作りたいとか、こういう世界に住んでいる人の服はどんなものなんだろうとか、空想みたいなものがほとんどで。ファンタジーが多いんです。

 

―自分のブランドにしかない魅力はどのような点だと思いますか?

日本育ちなので、ちょっとした日本のレトロっぽさみたいなのがデザインに入っているところだと思います。その感性はおそらく海外にはない。なので、格好いいレトロみたいな感じを目指してやっています。あとは、日本人ならではのネガティブさ。海外のデザインって、自信に満ち溢れていて明るいんです。けど私の場合、デザイン画1つとってもシャドーがめちゃくちゃ入っていて暗いんですよね。いつも人にもなっていないようなデザイン画からスタートして、画像とかを貼りながらイメージを膨らませて形にしています。

 

―林さんの場合、デビューしてすぐに東京コレクションにも出場されたわけですが、最初からブランドとして上手く経営することってあまり簡単なことではないと思います。その点については、どう考えていらっしゃいますか?

正直な話をすると今はとりあえず、大きく儲けようっていうことは考えていないんです。私自身まだ経験も浅いですし、まずはモノづくりの基礎を固めたいなって。今の時代、若手デザイナーが消費されていく時代みたいに言われることも多いと思います。でも、5年後には消えてるようなブランドには絶対なりたくない。だから今は取り扱って下さる店舗さんと個人受注で少しずつでも販売しながら、よりちゃんとしたものが作れるようにスキルを上げていければなって。

 東コレ出場を決めた理由

―今回、デビューコレクションにもかかわらず東京コレクションという舞台で、ショーという形式を選択されました。それには何か理由が?

一時期を考えるとショーの時代じゃないとかって言われたりもしますよね。でも、分かりやすくブランドを表に出せて知名度を上げられる点では、やっぱりショーって効果的なように感じるんです。私のブランドもまだ無名で、まずは認知度を上げることが必要だと思っていて。そんな中で、バンタンとPARCOさんが主催しているAsia Fashion Collectionというコンペでグランプリをいただいたこともあり、若手支援を行っているPARCOさんのFASHION PORT NEW EASTのNEXT枠として出させていただきました。

 

―初めて行なう自身のブランドのショーですから、大変な点も多かったではないでしょうか?

何もかもが分からなかったのが1番ですね。DMとか、プレスリリースとかも。「何それ! 誰に送ればいいの?」から始まって、どこまでの情報を記入すればいいのか作り方にも苦労して。プレスの方も付いてくれていたんですけど、分からないことだらけで人に聞いたり調べたり。ショーそのものも大変だったんですけど、他の周りの部分でも大変でした。

最新 Fumiku 2019SS Collection

―今回のコレクションのテーマを教えて下さい。

『明晰夢』というテーマで行っているんですけど、『明晰夢』って“自分で夢であると自覚しながら見ている夢”のことなんです。これまでは、テーマというものをあまり決めずに服を作ってきたんですけど、ショーを通して演出家さんをはじめとする沢山の人に協力してもらいながら1つのものを作り上げる上で、人に伝えるための言葉が欲しいって言われて。そこで、表現したかった質感と“自分がどこにいるのか分からないような感覚”を考えた時に1番近い言葉が『明晰夢』だったんです。あとはデビューということもあり、ブランドコンセプトに近しいテーマに設定したかったもの大きいですね。

 

―『明晰夢』というテーマを通して、どのような質感を表現していますか?

雨上がりの湿った空気、肌が重たくなるような感覚を雰囲気として置いていました。だから、演出でも雨が降る音を流して。私自身の暗い性格が表れているんですよ(笑) ただ、暗いだけでは着たいと思ってもらえるような服にならないので、ガーリーやスポーティな軽いテイストを取り入れることを意識しました。

 

―暗い性格がデザインに表れることも多いのですか?

結構ありますね。暗いというか気持ち悪い(笑) フリルを長くしすぎて垂らしたりとか、1つで良いリボンを大量に並べたり。スタイリングでも、下は3枚も重ねているのに上は裸に近いみたいなものや、ジャケットの上に下着着ちゃったみたいな。ショーで見ると違和感ないかもしれないんですけど、日常でこの人が電車に乗っていたら怖いと思うんですよね。

―HPを拝見したのですが、前回のコレクションよりもかなりスポーティ寄りに変化しましたよね?

今回は重たいスタイリングをしたいなと思って、でも重たいだけでは市場に受け入れてもらえないじゃないですか。だから布を沢山重ねる分、スポーティで軽やかな素材を使おうって考えました。あとは気分もありますね。最近ジムに通い始めてスポーツウェアを買ったので、スポーツ寄りにしてみようって思いました。

 

―今回のコレクションで、服を作るにあたって苦労した点はどのようなところでしょうか?

私、やりたいことが多いんですよ。色んな切り口からデザインしちゃうので、それを綺麗にまとめるのが難しかったですね。これもこれもになってしまうと、他人から見た時に1つのブランド、1つのコレクションに見えなくなってしまうので。袖が2枚付いているトップスや巻きスカートといった構築的なものが好きなんですけど、ガーリーも好きなのでフリルや小花柄もデザインに取り入れました。

若手デザイナー・林 史佳の目指す先

―林さん自身が、憧れているブランド、好きなブランドはありますか?

今は解散して無くなってしまったんですけど、ロンドンのMEADHAM KIRCHHOFF(ミーダム・カーチョフ)というブランドです。コレクションごとにテイストが大きく変わるんですよ。それが凄く見ていて楽しくて好きでした。私もその時の気分でデザインが変わるので、その点でも憧れています。あとビジネス的にはsacai(サカイ)ですかね。東京から出てきて今や世界で評価されているし、服だけでなくバッグも取り扱い始めて活躍を広げる姿が凄いなって。あれぐらい大きく活躍できるブランドになれたらなって思いますよね。

 

―最後に、今後の目標について教えて下さい。

ちゃんとした服を作れるようになりたいですね。そのためには、きちんと勉強しなきゃなって。将来のことは分からないんですけど、いずれトップブランド達が並ぶ百貨店に置いてもらえるようなレベルにはなれたらなと思います。あとは、服だけでご飯が食べられるようになるのが1番。まだ知名度もほとんどないですけど、日本だけだと市場が小さくて全然ですよね。なので、アジア進出してヨーロッパっていうレベルまで行けたら嬉しいなと思います。

 

ブランドを立ち上げることやショーを行うことに対して、ひと昔前とは価値観が変化しつつあることを教えてくれる。華々しい東コレデビューを果たしたFumikuであるが、これもブランドとして成長するための過程の1つに過ぎない。時代と共に若手デザイナーが消費されていく今、この先も活躍できるブランドになるために林 史佳は今後何を吸収していくのであろうか。

 

林 史佳(はやし・ふみか)

1995年生まれ、2018年にバンタンデザイン研究所を卒業。在学中にはAsia Fashion Collectionにてグランプリを獲得し、NYコレクション出場も果たした。2019SSシーズンより自身のブランド『Fumiku』をスタート。ブランドコンセプトは、「リアルとファンタジーの間の世界を表現し、新しい人物像を提案する」。

Instagram:@fumiku_fumiku

HP:fumiku.tokyo

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