衣装特別協力にCHANEL他、主演に菊池凛子を迎えた映画「ハイヒール〜こだわりが生んだおとぎ話」の上映会が11月30日にNY・ブルックリンで開催された。

当日は、本作が初の公開作品となった注目の若手監督イ・インチョル氏も登壇。Q&Aセッションでは、“こだわり”の詰まった本作について語った。

映画の魅力を紹介すると共に、上映会の様子をレポートする。

短編映画としては異例の豪華クリエイター陣

本作は2017年6月に日本で公開された、わずか30分の映画だ。短編映画とは思えない豪華な制作陣が話題を呼んだほか、インディペンデント映画としては異例となる全国19都市での劇場公開を果たした。

特に注目されたのは、その衣装。「CHANEL」より衣装特別協力を受けたほか、キー・モチーフのハイヒールは日本を代表するコレクションブランド「MIHARA YASUHIRO」の制作協力を得た。また、インテリアの一部にも「CIBONE」の協力を得るなど、ファッション要素の見どころ満載の作品となった。

監督・脚本を務めたイ・インチョル氏(以下、イ監督)は独自の哲学が注目される若手監督だ。中学卒業後から韓国で映画製作に携わり、19歳で活動拠点を日本へ移動。本作が初の劇場公開作品となった。

 お話の舞台は、遠い未来の世界である。美しくオリジナリティ溢れる世界観の中で、菊地凛子演じるアンドロイドの靴職人を中心に、4人のアンドロイドたちが物語を展開していく。

NY・ブルックリンの独立系シアターで上映会

バーのような佇まいの「FILM NOIR CINEMA」

今回上映会が行われたのは、NY・ブルックリンの中でも、近年ホットなグリーンポイントエリアにある「FILM NOIR CINEMA」。オーナーが作品を厳選し、イベント形式で上映しているサロンスタイルの映画館だ。

11月最後の日、イベント開始は21:00〜と少し遅い時間だったにも関わらず、映画館は満席だった。上映に先立ち、イ監督と製作総指揮・美術を務めたMutsumi Leeさん(以下、Mutsumiさん)が登壇。

『本作のテーマである、人間の“欲望”や“こだわり”に注目しながら楽しんで欲しい。』

とのメッセージと共に、観客を作品の世界へと誘った。

大興奮のQ&Aセッション

Q&Aセッションの様子(右:イ監督、左:Mutsumiさん)

エンドロールが始まった直後、

『That’s it!?』

と言う女性の声が響いた。衝撃のラストシーンに観客はざわついた。再び、イ監督とMutsumiさんが登壇し、興奮冷めやらぬ中、Q&Aセッションが始まった。

以下に、主なセッションの内容をまとめた。

 

Q:なぜKaiをジェンダーレスなキャラクター像にしたのか?

A:(イ監督)現在はまだまだ男性社会という認識。未来は違う形になるだろう、という想いを込めた結果、Kaiの設定に繋がった。

Q: (上記を受けて)それではなぜ、「ハイヒール」という女性らしいテーマを選んだのか?

A:(イ監督)単純に、女性の「こだわり」の方が分かりやすく、描きやすかった。男性のこだわりは、とても偏っていて強い印象がある。

Q: なぜ、「人間らしさ」を描く上で「欲望」や「こだわり」を選んだのか?人間には、他にも「食欲」などの欲があると思うのだが。

A:(Mutsumiさん)監督自身が、普段から非常にこだわりの強い人物。そのため、今回最も描きたかった人間の側面が「こだわり」だった。

Q: 日常において、監督が最も「こだわり」を持っていることは何か?

A:(イ監督)全てにおいて、と言える。特にファッションや食べ物、フィギュア収集などに関しては尋常ではない(笑)。常に、身の回りが自分にとってパーフェクトな状態になるよう心がけている。

Q: 撮影した際に最も楽しかったこと、また大変だったことは?

A:(イ監督)撮影中は全てが楽しかった。

(Mutsumiさん)最も苦労したのは、企画の段階。今回の作品で、何をすべきか考えることに一番時間がかかり、大変な過程だった。

Q:監督自身の考えとしては、人間やこの世界にとって「欲望」は必要なものか?それとも悪いものなのか?

A:(イ監督)環境や自然にとっては、人間の欲は悪だと思う。このまま人間の欲に任せて世界が進むと、あと100年以内に地球上の生物の90%が滅びてしまうと言われている。だけれども、この作品では、自分のメッセージを込めたというよりも、映画を観た人がそれぞれ自分で考えるきっかけにして欲しい、と思った。

(Mutsumiさん)「欲望」は、悪である一方で、人間にとって全ての活力になるのも確か。「欲望」が人間を人間たらしめているとも言えるのではないか。

Q:次の映画の構想はあるか?また、いつ頃公開になりそうか?

A:(イ監督)現在、プロジェクトを進めている真っ最中。2・3年後の公開になるのではと思っている。

Cinema内のロビーの様子

観客から次々と質問が上がり、とても活気あるセッションとなった。この他にも、謎めいた物語の核心に迫るQ&Aが多くあり、会場は大いに盛り上がった。ネタバレとなってしまうためレポートは控えるが、贅沢にも監督から直に解説を聴いた後、すぐに本編を見返したくなった観客は私だけではないはずだ。

本作は、たった30分間とは思えない、美しく深淵なストーリーで、何度も観たいと思うファンタジー作品に仕上がっている。また、セットや小道具の細部に至るまで監督のメッセージが込められているため、2回目以降は背景にも目を凝らすことで、違った視点から作品を楽しむことができる。

初の劇場公開作品で、独自の世界観を示したイ・インチョル監督。今回の上映会を通して、その美学を肌で感じることができた。次回作では、どんな“こだわり“を観ることができるのか、これからの創作活動が注目される。

 

映画「ハイヒール〜こだわりが生んだおとぎ話」

主演:菊地凛子

出演:小島藤子/玄理/谷口蘭

監督脚本:イ・インチョル

衣装特別協力:CHANEL他

製作配給:Lander Inc.

公式Instagram:https://www.instagram.com/lander_film/

公式ホームページ:https://highheels.lander.jp

 

 

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