テーラーメイド、オートクチュール、日本ではあまり馴染みの無いファッション用語かもしれないが、日本語に訳すと「仕立て服」のことである。顧客のサイズを綿密に測り、個別に仕立てるヨーロッパで伝統的な洋服作りの手法だ。歴史を遡ると、上流階級の人々はこの様な仕立て屋で洋服を個別に注文し、購入するのが基本であった。 世界的に大量生産のファッションが主流の今では、ヨーロッパでも伝統的な老舗の仕立て屋は姿を消しつつある。

ファッション本場、イタリア。ルネサンスが誕生した芸術の都として有名なフィレンツェは、紳士服や皮製品、宝石業など伝統的な製法を今でも大切に残し、後世へ伝え続けている職人芸が盛んな町だ。芸術の都として小さなアーティストのアトリエが現代でも数多く集結している。

そんな中、現在フィレンツェで活躍する1人の日本人デザイナーがいた。3年前よりクラシックな洋服作りの仕立てを取り入れていたテーラーメイドブランド「MOMOZONO」を展開するMomoko。東京でファッションを学び、イギリスで仕立ての知識を習得。

デザイナーMomokoを生み出したもの

イタリア、ミラノ発信のストリートマガジンCRACKERS57号のインタビュー記事で彼女が語った内容をご紹介したい。

(CRACKERS57号より)-Momokoさんがどこでファッションを学んだのかを教えて下さい。

スタートは東京のバンタンデザイン研究所です。スタイリスト科を卒業しています。その後は、現在はお亡くなりになってしまったのですが、スタイリストの大塚勇造さんを師匠としてヴィンテージ服のリメイクを学びました。

-東京から海外へ出たのはいつ頃ですか?また、その後の経緯も教えて下さい。

イギリスに渡ったのは22歳の頃です。ヴィヴィアンウェストウッドの息子・ジョーが手がけるテーラーメイドブランド「Child of the Jago」のインターンシップで、洋服の仕立て方を学ばせてもらいました。

-フィレンツェに渡る前もご自身のブランドを持ち、デザイナーをされていたそうですね。ロンドンにいた当時のデザイナーとしての活動を教えて下さい。

「de rien」というインディペンデントブランドをロンドンのアンティーク市場で出会ったイギリス人親子と一緒にスタートしました。最初は彼らが扱っていたフレンチヴィンテージ服のリメイクが主流だったのですが、次第にアンティーク生地を再利用したアイテムも制作をし、コレクションの幅を広げていきましたね。

-アトリエをロンドンからイタリアのフィレンツェへ移した経由は何故でしょうか?

フィレンツェでは3年前から独立して活動しています。東京やロンドンでの大都市生活は毎日がとても早い時間の流れで刺激的でした。しかし、アーティストとして空気が澄んだ自然豊かな地で、時間をわざわざかけてでも納得のいく制作活動を始めたいと考えるようになって。ロンドンで出会ったフィレンツェ出身のイタリア人アーティストと共通する物作りへの情熱を通し、価値観を共有できる職人やアーティストが数多く存在しているフィレンツェを制作活動の場に選びました。

-フィレンツェとMomokoさんの繋がりを教えて下さい。

フィレンツェは「サルトリア」という伝統的な手法で洋服を仕立てるテーラメイドの仕立て屋が有名です。洋服の細かい質はフィレンツェの顧客指導で大変多くを学ばせてもらいました。

時代に逆行したとしても質の良いものを

 

異彩な経歴を持ち、独自のスタイルを提案する彼女のクリエーションの源、テーラーメイドにこだわる理由を独自に伺った。

-ファッションでも大量生産、大量消費が主流とされる現代に敢えて、テーラーメイドやオートクチュールに挑戦する理由は何故でしょうか?

ユニクロやZARAなど、早くて安く生産する手法を産み出したファッション企業は、経済的な発展という面でかなりの成功を収めていると尊敬しています。しかしながら、質を求める職人、アーティストの一人としては、残念ですが大量生産文化、大量消費には少し反対しています。長年愛用したジャケットやコートには、いつまで経っても愛着があると思うし、またデニムや皮製品など長く使えば使うほど味わいが出てくる商品も価値があります。日本では、個人的なオーダーを通したクチュール文化は、日常着が着物から洋服に変わった当時からあまり一般的ではありません。シャネルに初めてアジア人としてオーダーをお願いしたのは、日本人クチュリエデザイナーで有名な森英恵さんだと言われています。私の顧客は特にデザイナーやアーティスト、建築家など、クリエイティブに関わる方が多いですね。時代の流れが大量消費に向かう中、それとは逆の物作りへ情熱を持ったお客様のニーズに答えることは欠かせません。

-Momokoさんが「Made in Italy」にこだわる理由は何でしょうか?

イタリアは長くからヨーロッパファッションの下請けを専門に行ってきました。「Made in Italy」製品は「Made in Japan」同様、質の高い製品が売りとされ価格も少し上回ります。他の国では決して見ることの出来ない特別な機械や伝統的な技術を持ち合わせているからです。残念ながら現在では「Made in Italy」と言っても工場は全て中国移民だったり、イタリア製品の質も少しずつ落ち始めています。しかしフィレンツェのような古い町には、今だに手作り製品を時間をかけて作り続けている小さなアトリエが残っている。そこが私がフィレンツェで制作を行っている理由です。

-大量に物が生産される中で、質の良いものとそうではないものの境界線が曖昧になってきている気がします。洋服の質は「Made in ○○」で見る以外で、どのように見分けることが出来るのか教えて下さい。

品質への理解はやはり本物を目にし、手に取る必要があります。綿密に細かいところまでこだわってデザインされ丁寧に一点一点手作りで作られた洋服は、質感から重厚感まで既製品のものとは大きく異なります。最近は、高級ブランドと言っても、次世代向けに値段をぐっと下げた展開を見せているブランドも多く存在します。若い層の方々にもぜひ、質のある洋服を試着して着心地の感覚を体感してもらいたいです。

-Momokoさんのブランド「MOMOZONO 」は現在も古着のリメイクがメインですか?

2019年に向けた今シーズンは特に着物のリメイクをメインに展開しています。ヨーロッパの人たちにも、ぜひ着物の質感と着心地を体感していただきたいと思い、日常着に取り入れやすいアイテムに作り変える作業を行いました。型紙はフランスのヴィンテージ服を現代風にアレンジして使用して。以前、日本の蚊帳をリメイクして作ったジャケットは、アメリカやイギリスでかなりの好評をいただいたことがあったんです。
また、今シーズンからはイタリア製の新しい生地を作ったリメイクとは異なるラインも発表しています。

 

時代の流れをあえて逆行したものづくり。良質な製品提供が退廃してきている現代、伝統とものの本質は今後どう展開されて行くのだろうか。デジタル文化で製品の流通が速度をあげる中、デザイナーMomokoのような若いクリエイターはまだ存在している。若者たちに本質を提供するサービスは、逆に今だからこそ必要なのではないだろうか。MOMOZONOの今後の展開にも期待したい。

Instagram @momozonoclothing

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