劇場でシネマ公開されている最新の映画も素敵だけれども、たまには昔の古い映画作品に触れるのも面白い。

先月11月27日オスカー監督イタリア人のベルナルド・ベルトルッチが、がんのため77歳で亡くなった。
ミレニアム世代の若い人たちにはあまり知られていないかもしれないが、「ラスト・エンペラー」や「1900年」など数々の華やかで美しい感動映画を撮り続けたヨーロッパ映画界の巨匠だ。特に1970、80年代ブームになった映画監督である。
良い作品は時代が変わっても必ず残り続ける。ベルナルド・ベルトルッチの作品も同様、今観ても心の底から震え叫びたくなるような何かがある。
今回は、追悼ベルナルド・ベルトルッチ監督と代し、若者たちのために分かりやすく彼の名作を3選に絞り紹介する。この機会にぜひ、彼の作品の魅力を、まるで新しい新作に出会う様な気持ちで再発見していただきたい。

 

ベルナルド・ベルトルッチ一番の代表作といえばコレ!

-「ラスト・エンペラー」1987年公開

ベルナルド・ベルトルッチの代表的な大名作。その名の通り、中国の清朝最後の皇帝「ラスト・エンペラー」溥儀の波乱万丈な生涯を描いた歴史映画である。皇帝自身が記した自伝「わが半生」を原作に映画化されたかなりリアルな内容だ。中国の時代が大きくがらっと変わった20世紀の歴史をただ学ぶというだけなく、映像の美しさや壮大な流れを観て感動出来る作品である。第60回アカデミー賞作品賞、並びに第45回ゴールデン・グローブ賞、ドラマ部門作品賞を受賞。日本では、海外で広く活躍する音楽家の坂本龍一がサウンドトラックの一部を手掛けたことで話題になった。

ベルナルド・ベルトルッチ監督が得意とする移り変わりやすい時代の流れをダイナミックにかつ洗練させて描くという作風が大きく目立つ作品でもあり、またアジア、中国の歴史をヨーロッパのイタリア人監督が高い芸術センスで描いたということでも大変評価されている。20世紀初頭の中国を舞台とした豪華な舞台美術や衣装など、アートディレクションもこの映画の見どころであり、同じく中国を舞台にした現代映画「イップ・マン」シリーズなど、「ラスト・エンペラー」が多大に影響を及ぼしているのがあからさまに伺える。

 

エンニオ・モリコーネの音楽、若きロバート・デ・ニーロが魅力の名作

-「1900年」1976年公開

”ベルトルッチ監督が映画「1900年」のオープニングクレジットで起用したイメージ、イタリア人画家Giuseppe Pellizza da Volpedoの絵画「The Fourth Estate」”

主演はアカデミー賞では常におなじみの名俳優、ロバート・デ・ニーロ。家族の経済的な階級が全く異なった2人の幼なじみの男の友情を、ベルトルッチらしく時代が移り変わるごとに美しく描いた感動作品だ。1970年代の映画とは思われないほど斬新で、時代や国境を越えても変わらない共通の「友情」という強い絆がこの映画の重要なテーマである。

タイトルの「1900年」とは20世紀という意味が込められいて、1900年前半から第一次、第二次世界大戦の終了までのイタリア現代史を感動的に描いた大長編作品。ノーカット版はなんと316分もあるのだが、場面と時代背景が次々と変わるので飽きが全くこない不思議な映画である。音楽担当は、多様な映画音楽を手掛けたことで著名なイタリア人作曲家エンニオ・モリコーネ。また、貴族から農民までと多種多様なイタリアのアンティーク衣装が見られるのもこの映画の魅了。一つの映画でこれほどバリエーションの効いた衣装は中々見られないと言えるほど映画セットの内容がかなり濃い。ベルナルド・ベルトルッチの最も得意とする映画美術に力が入った十分に見ごたえのある映画だ。週末などの休みの日に一人でじっくり自宅鑑賞したい。筆者である私自身、とても長い映画であるにも関わらず一日3回も繰り返して観た経験がある。若いロバート・デ・ニーロには、今の渋さとは全く異なったキュートな魅力を感じる。

 

これぞイタリア映画、カッコいい男のファッション映画

-「暗殺の森」日本公開1972年

70年代イタリアを代表的するベルトルッチ映画だ。タイトル的にも少し暗い印象の映画に見えるが、その名の通り映画全体もかなりダークで何とも言えない強烈な渋さがある。一言で言うと男らしいかなりファッショナブルでカッコいい映画。イタリア映画らしい危険なエロティズムが甘い誘惑についつい誘われてしまいそうになるという至高の名作である。映画自体は少年時代、正当防衛と言えども友人を殺してしまったという暗い過去を背負った1人の男性の人生を細かく追っていく。第二次世界大戦中、彼の少年時代のトラウマがファシストという悪の世界へどんどんハマって行く原因となるというストーリーだが、最後には彼が思いもしなかったドンデン返しが待っている。

政治と性という難しいトピックをベルトルッチ監督が鋭い視点できわどくとらえた、70年代当時のイタリアのプロパガンダ映画だ。映画表現として一般公開するにはかなり限界ぎりぎりの一線で人類のタブーを問いたサスペンス。戦時中とは言えどもここまで混乱した精神が一般化した世界、善悪の判断をどこまで制限するのが正しいかそうでないかはこの映画を見終わっても正直答えが出ない。さらにこの映画は、心理学的に見てもかなり興味深く描かれている。トラウマなど人間の心理を狂わせる過去の経験がいかにそしてどれだけ強く、また同時に全く意味なくして私たちの人生に現実という形で現れてくるかを、悲惨にも物語り非常に考え深い名作品だ。最近の映画では中々見ることができない、娯楽としてと言うより人生を学ぶ一つのきっかけとなるような映画でもある。日本で言う名監督、黒澤明の作品で感じられるような映画監督としての強いメッセージ性が含まれている。

政治、時代の流れ、精神心理、性、人と人とのつながりなど難しいトピックを感動的に、また美しくとらえ続けた天才映画監督のベルナルド・ベルトルッチ氏。彼が映画史に名を残す名監督であることは間違いない。彼が亡くなった今でも彼の名作が消えてしまわないよう、私たちは後世に彼の作品を伝え続ける必要があるだろう。これまで素敵な作品を届けてくれて有難う。77年間、お疲れ様でした。追悼。