Harmony Korine(ハーモニー・コリン)をご存知だろう。Larry Clark(ラリー・クラーク)が監督した稀代の映画『KIDS』の脚本を書き今はアーティストも兼ねる、映画界を代表する「キッズ」だ。

その彼を、これまでTrouble Andrew(トラブル・アンドリュー)とコラボし世界にラグジュアリーなユースカルチャーを届けてきたGucci(グッチ)が、2019 AWのルックブックの撮影に起用した。

デザイナーAlessandro Michle(アレッサンドロ・ミケーレ)がコリンを選んだ。これはただ名高いメゾンが有名な写真家を雇うこととはわけが違う。

映画『KIDS』

1995年、クラークが52歳の時に制作したものだ。フィクションかリアルか論争を生んだほどのもので、この記事を読んでいる人の中には観たことのある人、むしろカルト的に愛好する人もいるだろう。

それでも少し説明したいと思う。

「47歳の頃にスケートボードを学んで、スケーター達と交流を深めた。そこから「KIDS/キッズ」のアイデアは浮かんだんだ。脚本は実際のスケーターに書いてもらわなくてはと考えて、面識のあったハーモニー・コリンに依頼した。「KIDS/キッズ」は、僕自身がスケーターキッズ達と交流した3年半の期間で見たもの全てを注ぎ込んだストーリーラインをもとに制作された映画。スケーターの作品を創りたければ、彼らを追っかけまわすのではなく、彼らと一緒にスケートしなくちゃならないんだ。」(FASHIONSNAP.COMより)

3年間スケーターたちと時間を共有することでようやく「内側」に入れてもらえたとクラークは続けた。時間を共にするでけではなく、共有することで本当の「生」のキッズを捉えることに成功した、それがフィクションかリアルかの論争を起こすほどにリアルな作品を作り上げたトリックだったのだ。

ちょうど『Trainspotting』が出る1年前のもので、ドラッグ、セックスに暴力といった若者の姿を描いている。 他と一線を画すのは、コリンを始め脚本やキャスティングにストリートのスケーターキッズだけを起用したことだった。

ハーモニー・コリンの今

2018年の9月、世界に17施設を要するガゴシアンギャラリーの拠点ニューヨークで、コリンは自身の絵画展『BLOCKBUSTER』を開催した。そこではVHSテープに描かれた彼のアートが飾られ、訪れた人々を魅了した。

「行きつけのタコベルの横にレンタルビデオ屋があって、そこのショーウィンドウを毎日眺めてたんだけど、置いてあるVHSのジャケットの雰囲気が良いなと思ったんだ。ひとつの大きなインスタレーションみたいで。客がいるのは見たことがないし、ジャケットにもホコリが積もってたんだけど、それが逆に、白くかすんだような美しさを与えていた。そこでVHSのジャケットに絵を描いてみようと思いついた。もちろんVHSのなかにはストーリーが収められているんだけど、それを変えて絵画で表現できるのは楽しかった。」(i-D Japanより)

表面上汚いものに見えて、その中にある美しさを形を変えて表現するその手法は、『KIDS』の脚本を書いた時から変わっていないのではないだろうか。そしてそこには必ず彼の「リアル」が描かれている。

GUCCI GHOSTを経て

グッチとアンドリューのGUCCI GHOST(グッチ・ゴースト)は間違いなく世界のファッションを進化させた。ブートレグという本来嫌われる立場のものを利用したからだ。

アンドリューはコリンと違い、クレイジーなキッズというわけではない。オリンピックに二度出場した元スノーボード選手で、彼が始めたグッチ・ゴーストはハロウィンの時のおふざけがスタート。

しかしそのおふざけは後にニューヨークのグラフィティアートとなる。過去がどうあれ彼の精神は紛れもなくユースだ。

ミケーレは何百年の昔から今に至るまでのコンテクストを読む力に長けている。今は特に彼が青春を謳歌した時代であるスケーターやグラフィティの広まったユースカルチャーや、宇宙への憧れが爆発したSF絶頂期に焦点を当てていると思える。

彼の理想はおそらくクラークのそれに近い。何かを参照し表現するには、その何かの直接触れる必要を知っているのだ。 クラークと違うのは一つの作品においてそれだけに執着しないことで、彼のインスピレーションの引き出しにある全てのコンテクストを引っ張り出し、それを人が思いつかないような方法で繋ぎあわせる。

まず第一に90年代のスケーターとイタリアのメゾンのミクスチャーを、Guccio Gucci(グッチオ・グッチ)もしくはスケーター本人たちが予想しただろうか。オリエンタリズムなボタニカルやボウタイもそうだ。

 

ミケーレという奇才のクリエイションをコリンが撮るということには、歴史の理解力とそれを裏付けるセンスが要される。

ミケーレのユースカルチャーを重視するクリエイションは時代の流れの前に止まるかもしれない。その時に彼がどのようなコンテクストをリアルに引き出し、自身の考えと紡ぎ合わせるのか。

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