先日発表されたばかりのDiorのメンズコレクション会場で奇妙な光景が目に飛び込んだ。

そこに、モデルがランウェイを闊歩するというお決まりの光景はない。そこにあるのはポーズを決め、人形のように動くことのないモデルたちとそれを自動で会場中心へと運んでいくベルトコンベアー。この斬新なアイディアを取り入れたのが、昨年3月よりDiorの新ディレクターに就任したばかりのキム・ジョーンズだ。今までも数々のユニークな発想でコレクションを成功に導いてきた彼の世界観に注目が集まっている。

ヴィトンからディオールへ

1979年、ロンドンに生まれたキム・ジョーンズ。子供時代は家族とともにアフリカなど世界各地を転々として過ごした。後にロンドンの名門 セントラル・セント・マーチンズでファッションを学び、2003年には、自身のブランド、KIM JONESを立ち上げた。

その後も、数々のブランドでデザイナー経験を積み、2011年より約7年間LOUIS VUITTONのアーティスティックディレクターを務めていた。ルイヴィトン在籍時には数々の人気ブランドとのコラボレーションを実現させてきた。なかでも日本でも社会現象と化した、ルイヴィトン×Supreme(シュプリーム)のコラボでは、店内への入場制限が敷かれる中、入店のための抽選券を手に入れるために明け方から表参道に長蛇の列ができた。

そして昨年1月に退任を迎え、ルイヴィトンでの最後のショーにはナオミ・キャンベルとケイト・モスが駆けつけ、彼のラストを彩った。

モデルが歩かない新たな見せ方

キム・ジョーンズにとっては今回のコレクションが、DIOR HOMMEに就任してから3回目のショーとなった。ショーは、カッチリとした洋服に身を包み、ポーズを取ったまま微動だにしないモデルたちがベルトコンベアーにより次々と運ばれてくる様子から始まった。その肌にはファンデーションがたっぷりと塗られ、まるで人形のようだったという。漆黒の背景から次々と流れてくるそれはとても無機質なものに見える。今回の演出はパリの街にも点在する彫像をイメージしたという。

これまでの常識を覆す新しい発想だが、彼の持つ世界観とその表現方法はこれだけではない。

東京に突如現れた巨大ロボット

親日家としても知られるキム・ジョーンズ。それは、DIORのメンズ・プレ・フォールコレクションを東京で発表したほど。そこでは日本人アーティストの空山基(そらやま はじめ)に製作をお願いし、完成した高さ11mもの巨大ロボットが会場を見下ろした。以前から空山ののことを知っており、昨年の夏に空山が開催した展覧会で初対面を果たしたという。そこで空山に依頼し、今回の東京でのショーと巨大ロボットの出現が現実となった。

 空山はセットにとどまらず、このシーズン限定の「ディオール」のロゴや今回のコレクションのカギとなる桜のプリント、「ディオール」のモノグラムも手掛けた。いずれも空山のフューチャリスティックな世界観が反映されたものだ。キムは空山を「日本には村上隆や草間彌生ら素晴らしいアーティストがいる。彼もそのレベルのアーティストだと思うが、そこまで知られていない」と評価し、「彼とコラボして何か新しく面白いものを作るのは楽しかったし、彼が作った像も強い女性型ロボットで、今の時代に合っていて気に入っている。それに、映画『メトロポリス』もイメージしていた。この女性はこの映画から出てきたイメージなんだ。僕らが(東京という)メトロポリスにいることも関係している」と話す。キムはコレクションで、空山の作品にインスパイアされたメタリックな素材や光り輝くアイテムを披露するという。(WWD Japanより)

KAWSコラボ、巨大なバラのモニュメント

キム・ジョーンズがDIORで初めて手がけたコレクション、「ディオール サマー 2019 メンズ カプセルコレクション」では、キャラクターの目をバッテンマークに書き換えてしまうことで有名なアメリカ人アーティスト、KAWS(カウズ)とのコラボレーションを行った。コレクション会場にはKAWSのオリジナルキャラクターであるBFFの巨大オブジェが中心に置かれた。その体はバラとピオニーの花で出来ており、一つ一つ手作業で作り上げられたという。

このような一風変わったアイディアで見るものを楽しませてくれるキム・ジョーンズ。大の親日家である彼は、GUとのコラボレーションも過去に行っており、これからの日本との繋がりにもさらに期待したい。

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