(前編)NYの名門ファッション系大学LIM・FITで学んだ2人の特別対談ー日本人が海外経験を積むメリットとは

 日本人が海外のファッション業界で活躍するのは、ハードルが高いことなのだろうか。グローバル規模でトレンドが動くのが当たり前となった現在、海外での経験がキャリアのキーとなることに、間違いはないと思う。今回は、10代の頃からアメリカへ飛び出し、今まさにファッション業界で羽ばたこうとしているミレニアル世代の女性2人に、対談形式でインタビューを行った。

 1人目は、NYの名門LIM Collageでファッションマーケティングのマスターを取得したEriさん(写真左)。2人目は、こちらも名門FITでアクセサリーデザイン専攻を修了した Yukaさん(写真右)だ。2人は、同じシェアハウスに住むルームメイト同士でもある。仲良しな2人に、本音で語り合って貰った。

アメリカ、そしてファッション業界をめざすまで

Yukaさん制作のパターン

-これまでの経歴について、伺います。お2人とも、高校卒業後に渡米されていますが、当時はどんな想いで進路を選んだのですか?元々ファッション業界をめざして?

Eri:実は私は、生まれてすぐNYの隣のニュージャージーへ引っ越して、7歳まで過ごしていたんです。その後は帰国して、日本の学校に通いました。でも高校生になって進路を考えた時に、国内で行きたい大学がわからなくて…。

Yuka:あ、その気持ちわかります(笑)。

Eri:(笑)。ファッション業界のことは全く考えていなくて、漠然と語学を活かしたい、とだけ思っていました。家族に相談したら、もしいつかアメリカに戻りたい気持ちがあるなら、今がチャンスなんじゃない?と言われたんです。あとは正直に言うと、英語以外で得意なことがなかったから、日本の受験は難しいなと(笑)。

Yuka:私も、高校生の時点ではやりたいことが全然わかってなかったなぁ。ただ、大学ではやりたいことをやりきる生活を送りたいと思っていて。でも、日本の大学生活ではあまりそのイメージが持てなくて…。そんな時に、知人から海外大への進学準備専門の学校を紹介して貰ったんです。アメリカなら、やりたいことが絶対見つかる!って感じました。英語を使えば、世界中の人たちと深いコミュニケーションができると思って、1年間死ぬほど勉強しました(笑)。

Eri:うん、語学は本当に大事なツールだよね。その後、私はニューヨークの大学へ進んで、ミュニケーション学を専攻しました。メディアなどにも派生する内容だったので、今思えば、ファッションマーケティングにも繋がってきますね。ファッションは、もちろん当時から興味があったけど、自分の職業にするとは、考えもしなかったです!同じニューヨークでも、田舎の方の大学だったからか(笑)、周りにそういう進路を選んだ知り合いもいなかったし。

Yuka:私も同じ。ファッションは大好きだったけど、それ関係の仕事が自分にもできる、という発想がなかった。LAのコミュニカレッジ(以下コミカレ)に進学した後も、とにかく色々なことを勉強しました。専攻をアート系とは決めていたけど、Fine artsの他にも、Biological physical science、Languageの3つのdegreeを取得したんです。

Eriさんは本も大好き(授業の一環で紹介ブログを書いたそう)

なるほど。それでは、ファッション業界を本格的にめざし始めたきっかけは?

Eri:大学卒業後に、OPT(Optional Practical Training)の制度を使って、日本の留学生を支援するエージェントで働いていたんです。留学のお世話をするので、自然と沢山の学校の情報を扱うことになって。その時に、マンハッタンにあるLIM Collage(以下LIM)のことを知りました。ファッションビジネスに特化した学校で、衝撃を受けたのを覚えています。というのも、ファッションに関係する仕事は、デザイナーやクリエイターだけじゃないって、そこで初めて気がついたんです。

Yuka:うんうん、本当にそう。

Eri:ファッションビジネスという分野と出会って、これだ!と思って。進学を決めて、1年間のプログラムでファッションマーケティングのMasterを取得しました。

Yuka:実は私も、OPTがきっかけ。コミカレで勉強はしましたが、まだ進路がよく分かっていなくて、とにかくアメリカで働いてみようと思いました。旅行が好きだったから旅行会社を選んで、約1年間、現地ツアーなどの手配を担当しました。その会社で働いていた時、服装などがどうしても限られていたんです。日本の企業だったので、いわゆるオフィスカジュアルで(笑)。そこで、人生で初めて自分のスタイルを縛られて気づいたんです、ファッションこそが私の生きがいだ!って。自分にとって一番楽しいことなんだと。

Eri:なるほど。そこで実感したんだね!

Yuka:うん。やっぱりファッション関係に行きたいなと思った。なかでも靴が好きだなと思って、靴について勉強できて、かつ楽しそうなところはないかリサーチしたんです。革靴の本場の、イタリアなども調べたけど、自分はスニーカーとかも好きなので、しっくり来なくて。あとは、その時点から学校に通い始めるなら、一流になれる所にしか行きたくない、と考えていました。そこで、名門と言われるFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)のアクセサリー・デザイン専攻を選択しました。プログラムに学びたい内容が詰まっていたのと、1年間で修了できるのも魅力でした。

名門ファッション大学での学び、そして現場での経験

Eriさんがプロジェクトで作成したスライド

―それぞれ、LIMとFITでの生活について伺います。具体的にどのようなことを、どのような人たちと一緒に学んでいたのですか?

Eri:元々、ファッションとは関係ないことをしていた人も多かったです。1年間のプログラムだったので、キャリアチェンジの人とかですかね。ヨーロッパからアジアまで、いろんな国の人がいて、バランスは良かった。

Yuka:意外と、ファッションに関係ない経歴の人とかいますよね。

Eri:いるいる。授業では、まずは一般的な消費者心理など、広いところから学びました。プロジェクトでは、実在のブランドを選んで、効果的なプロモーションを考案したりしました。基本的には、マーケットを知った上で、ニーズを考えたり先を見通すような訓練が多かったと思います。あとは、ファッショントレンドの記事を自分で分析したり、インフルエンサーについて分析したり。

Yuka:私の方も、いろんなキャリアを経て来ている人が多かったです。国籍も様々で、正規生では日本人は私一人だけでした。靴については、Human Anatomy for designという、人体解剖学などを学びました。私は、自分にぴったり合う靴が見つからない!という問題が、この専攻を選んだ1つのきっかけだったので、人体の構造面からその原因を知れて良かった。自分の靴を解体して、造りを勉強したりもしました。

Eri:解体した靴のソールとか、見せてくれたよね(笑)。

Yuka:おもしろかったでしょ(笑)。あとは、靴や鞄の種類、スニーカーの歴史、道具やツールの使い方など。興味深かったのは、マテリアル、特にレザーについての授業。顔がついたままのクロコダイルの革を見たりして、衝撃を受けて。レザーは“命”なんだ、と実感しました。最近の、ビーガン・レザーなどのトレンドにも繋がりますよね。

―お2人とも、アメリカのアパレル企業でのインターンを経験されていますよね。ファッションビジネスの現場で感じたことを教えてください。

Eri:私は、下着ブランドである「Wacoal」(ワコール)のアメリカ法人で働きました。日本のワコールは、海外でも結構有名なんですよ。びっくりしたのは、女性の下着にも関わらず、インフルエンサーを通したプロモーションなどが主流だったこと。特に日本だと、下着について個人が何か公開・発信することって少ないと思うんです。インフルエンサーやSNSを使ったマーケティングは、アメリカの大きな企業でも本当に力を入れているんだなと、実感しましたね。普段見ている、インスタグラムの広告などの裏側を見ることができました(笑)。

Yuka:それはおもしろそう(笑)。

Eri:あとは、企業がいかに自らのブランドイメージを大切にしているかを学びました。プロモーションのプランに関しては、ほんの少しでもイメージにそぐわないものは、除外されます。シビアでしたね。

Yuka:やっぱり、オフィスで働いている人もイメージに合う雰囲気の人が多かったんですか?

Eri:いや、働いている人は、いたって“普通”の人も多かった(笑)。アパレル企業は特殊な世界、という感じではありませんでした。Yukaさんのところは、職人集団だったと思うから、また雰囲気が違うかな。

Yuka:私がインターンとして働いていたのは、「Jutta Neumann」(ユッタニューマン)という、ドイツ生まれの女性デザイナーが立ち上げたシューズブランドです。日本でも知る人ぞ知る、人気のブランドで。すべての工程が、アトリエで職人さんによって行われているので、本格的にもの作りの現場を経験することができました。実感したのは、もの作りでは本当に、お客さんの使い心地を重視しなければならない、ということ。お客さんの手に渡る物として、それに気持ちを込めることは、すごく大切です。日本人は、そういった意識が強い方だとは思うけど、こちらでは正直、そうでない人たちの文化も見ているので…。

Eri:物に対する意識というか扱い方は、本当に違うよね…(笑)。

Yuka:うん(笑)。あとは、素材についても知識を深めました。詳しく知っていないと、靴を作る上でも理解が深まらないんです。アトリエの職人さんは、人数がとても少なくて大変だと思うんですが、インターンの私にも本当に皆さん優しくて、たくさんの事を学ばせて貰いました。

インターン先でのYukaさん

―現在は、お2人とも同じ所でインターンをされていると伺いました。

Yuka:はい、「Sand by Saya」といって、日本人の女性デザイナーがNYで立ち上げたサンダルブランドで働いています。元々、私が一度インターンをしていたのですが、ご縁があってEriさんを紹介したのを機に、また私もお世話になっています。Sayaさんは、アメリカで一からブランドを立ち上げてビジネスを広げていて。めちゃくちゃパワフルで、すごい人です。

Eri:うん、パワーやメンタル面の強さは本当にすごい!同じ日本人の女性が、アメリカのファッションビジネスに切り込んでいくのを、現場で間近で見れるのは、おもしろいです。

 

後編に続く:2019年2月17日に公開

 

 意外にも、2人に共通していたのは、最初からファッション業界をめざしていたわけではないということ。いつも自分の想いに真っ直ぐ向き合って、挑戦し続けてきたからこそ、今の道が拓けたのだろう。

 この2人は普段もよく、ファッションやコスメ、グルメなどの話から、自分の経験を通して感じたことなどを話し合っている。今回の対談でも、お互いがいつも刺激を与えあっているのが伝わってきた。10代の頃からアメリカで闘ってきた者同士だからこそ、共有できる想いがあるのだと思う。

 次回の後編では、2人が考えるファッション業界の今と未来、日本人が海外経験を積むことについて、2人の今後の活動などについて話を聞いていく。

Eri Yoshida(写真左)

1992年生まれ、福岡県出身。幼少期をアメリカで過ごす。日本の高校を卒業後、SUNY(ニューヨーク州立大学)の1つ、New Paltz校へ進学。その後、NYのLIM CollegeにてファッションマーケティングのMasterを取得。

Yuka Okushima(写真右)

1993年生まれ、神奈川県出身。日本の高校を卒業後、LAのコミュニティカレッジへ進学。その後NYのFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)にてアクセサリー・デザイン専攻を修了。

Instagram:https://instagram.com/beingoxy

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