(後編)NYの名門ファッション系大学LIM・FITで学んだ2人の特別対談ー日本人が海外経験を積むメリットとは

元々、ファッション業界をめざしていなかったにも関わらず、アメリカ随一のファッション系名門大学を卒業、そして最前線の現場で経験を積んでいるEriさん(写真左)とYuka(写真右)さん。対談の前編では、2人がアメリカ、そしてファッション業界をめざした経緯や、大学での学び、インターンの現場で感じたことなどを話して貰った。

前編はこちら

今回は、経験を踏まえて考えるファッション業界の今と未来、早くから海外経験を積むことについて思うこと、今後の活動などについて伺う。

2人が考える、ファッション業界のトレンドと未来

Eriさんは授業で人気ブランドの新しいマーケティング戦略を考案

―学びや経験を踏まえて、日本のマーケットも含め、ファッション業界の今後の展望についてはどう考えていますか?

Eri:現場に出てみて、私たちの世代以降では、本当に実店舗がなくなるのかも?と思いました。消費者の購買活動はネットショッピングが中心になってきているので、アパレル企業が店舗を構えるとしても、試着のためだけのお店として設けて、注文はネットで行う、といった形の方が実際、在庫管理なども効率が良いんです。現に、こういったお店がもうありますよね。あと、大きな流れとしては、サスティナブルの追求。

Yuka:そうですね。フェアトレードなども含め、ファッション産業が環境や社会にもたらす影響をしっかり考えるのが、主流になっています。

Eri:そうそう。最近は、服ひとつを買うにしても、その制作背景やプロセス、購入に至るまでをひとつのストーリーとして、“経験”を買う、という意識が強い若者が増えていると思います。

Yuka:うん、大量生産・消費の流れは、確実に変わっていきますね。実際、今後はカスタマイズやオーダーメイドが絶対に広がると考えていて。今までは、すごくニーズがあるのに、コストがかかるために手が届きにくかったんですが、3Dプリンターなど、テクノロジーの進化で手軽で身近なものになると思うんです。これを実現するのが、私の目標の一つなんですけど…。そしてもっと未来には、AIの発達でよりコスト・物価が下がって、新たな余裕が出てくるんじゃないかな。その余裕が生まれた時にも何か、新しい流れができると思います。

海外で経験を積むということ

Eriさんはシューズブランド向けのプロモーションも考案。Yukaさんをモデルに撮影を行った。

―たくさんの苦労があったと思いますが、それでも海外で学んで良かった、という点は何ですか。

Yuka:こちらでは、とにかく自分のアイデンティティを大切にしてくれる、と言うところかなぁ。アメリカ人の友達に言われたんです、「もっとアイデンティティを大事にしろ!」って。気づいてみたら、周りの人は確かにみんなそうでした。みんなやりたいように、本当に自分らしく生きているなと。

Eri:わかります。私も大学の寮生活で、文化が全く異なる人たちと24時間一緒に過ごすことになったので、本当に大変だった!みんなそれぞれ、自分のペースですからね(笑)。でも段々と、違う文化や考えを持つ人たちと暮らすのにハマってしまって。数年経ったら寮を出る友達も多い中で、結果的に4年間ずっと寮で過ごしました(笑)。違いを楽しく感じるようになったんですよね。

Yuka:あとは、コミカレ時代の個人的な経験ですが、ある授業で、日本人がやっぱり私だけで、しかも先生の英語の訛りがすごくて(笑)、全然何を言ってるか分からない!って状況になったんです。でも、その先生がとても良い人で、私を気にかけてくれたんですね。すると、クラスのみんなが私のことをケアしてくれるようになりました。そこでやっと、自分がここで受け入れられている、と言う実感を得ました。初めてクラスの一員になれたというか。

Eri:うんうん、それは本当に嬉しい感覚だね!

Yuka:うん。アメリカという大きな舞台で、自分が思い描いていた留学生活に辿り近づけたのかな、と思って嬉しかったです。

―10代の頃からアメリカで過ごし、様々な経験をされているお2人ですが、日本人が若いうちから海外経験を積むことについて、どう思いますか?

Eri:まず、日本にいたら得られない視点を早くから身につけることができるという点では、やっぱり貴重な経験だと思います。例えば、日本にいたら変だと思わなかったことを、問題だと捉える国もあるんだ、ということを知ったりとか。自分の常識が、世界では常識ではないんだと改めて実感する場面が多いです。

Yuka:まさにそう。個人的には、一度、外から日本を見てみるのは良いことだと思います。何でもかんでもグローバルな方が良い!という意見ではないんですが、その方が、いろんな人と出会って、いろんな面から日本や自分のことを理解できると思うので。こちらでの経験は、本当に気づきが多いんです。Eriさんも言っていたけど、自分が持っている常識や思い込みを客観的に知ることができるし、その上で、自分の考えを持つことができます。

Eri:そうだよね。自分の考えを持つと言えば、確かに、発言や表現をしないといけない場面が多いので、「わかりません…」と言うことが減って、自分の意見を持つようになりますね。私は、英語の面では苦労しなかった方だと思いますが、性格は普通の日本人なので(笑)、最初はやっぱり、授業中に手を上げて意見を言ったりできなかった。

Yuka:一般的なあるあるだけど、本当それ(笑)。

Eri:(笑)。あとは、こちらでは自分から助けを求めないと、基本的には手を差し伸べてくれないので、常に自分で積極的に行動するようになります。しかも、トラブルや例外に対しては柔軟に対応しなくちゃいけない。若いうちからこういった経験をすることで、サバイバル力をつけることができると思います(笑)。ただ、個人的には、海外の環境などが向いてないと感じる人が、無理やり来る必要はないかなと…。

Yuka:うん、サバイバル力や自分一人でやりきる力は、大事!私は最初、やっぱり言語面での苦労が多くて。英語そのものもですが、先生が何を言っているか分からない、でも誰も助けてくれない、と思った時に、それまで自分が、いかに周りの人に頼って生きていたのかを思い知りました。あとは、同じ留学生でも、他の国の人はみんな、自分よりもはるかに英語力が高くて。一生懸命、準備はしてきたけれど、現実は甘くないと痛感して、本当に凹みましたね。世界の若者のレベルを知ることも、良い刺激になると思います。

Eriさんが授業の一環で書いたブログ。ファション関係の本のレビューをしている。

 

―これから海外を目指す人へ、アドバイスなどがあればお願いします。

Eri:学校も良い学びの場ですが、海外では、インターンやボランティアなどで現場経験をたくさん積むことは絶対に不可欠です!特にアメリカでは、ファッションに限りませんが、何か職業・ポジションに就く時は、最初から何かしらのスキルを提供するのが当たり前なんです。日本のいわゆる“新卒”の概念とは違うので、“エントリーレベル”で求められる水準の高さが全く違う。なので、現場に出る、あるいは自分でファッション関係のインスタやYoutubeのアカウントを設けてみるなど、自分に出来ることを、できるだけ多く実践した方がいいと思います。

Yuka:本当にその通りで、こちらでは、現場で何もできなかったらクビ、という勢い。なので、とりあえず行動を起こすことが何よりも大事です。止まっているのが一番良くない。最初から「自分には無理だ」と、思わないで欲しいですね。あとは、とにかくいろんな人に出会うこと。チャンスを掴むためにも、コネを作ることは大切です。

今後の活動について

―今後のお2人について伺います。直近では、どのような進路を考えていますか?

Eri:個人的には、インフルエンサーやSNSマーケティングに興味があるので、直近ではその方面を追求していきたいですね。あと将来的には、進路選択などについて、自分の経験を踏まえて情報やアドバイスを提供できたら、と考えています。今の日本では特に、ファッション業界への進路というと、少し視野が狭いと思うんです。その関係の専門学校に行かないといけない、と思われていたりとか。オプションがないですよね。そういう認識を変えることができたらなと。留学や海外経験についても、いろんな人に広めていけたらと思います。

Yuka:3Dプリンタにすごく惹かれています。実際、3Dプリンタを活用したファッション関係の企業もあるので、興味を持っていて。全ての人に、自分にぴったり合う靴を提供したいです。

―最後に、今後の人生の目標について教えてください。

Eri:まずはファッション業界で、エキスパートとして活躍できる自分のポジションを確立したいです。そしていつかは、マンハッタン島を一望できる所に住みたいな…(笑)。でも、とりあえず、お部屋用にキャンドルとお花を買う余裕があって、頻繁に美容室に行ける生活ができたら、最高です(笑)。

Yuka:それいいですね〜(笑)私は、おもしろいことをし続けていきたいですね!あとは、世界中に友達が欲しいです。

 

2人は以前に、ファッション業界をめざすことや、海外へ出ることを「特別」だと思わないで欲しい、と言っていた。もちろん、簡単なこと、と意味ではない。2人が現在の場所に立っているのは、並々ならぬ努力をしてきたからこそ。しかし、対談の中で言われていたように、自分には無理だと決めつけていたら、選択肢そのものに気づけなくなってしまう。

視野を広げ、自分自身と世界について深く知ること。そして自分の想いに正直に、挑戦し続けること。それが海外で自分の好きな道を切り開くためには大切だと、2人は教えてくれたように思う。とってもチャーミングで実は熱い、この2人がどのようにファッション業界で輝くのか、今後の活躍が楽しみだ。

Eri Yoshida(写真左)

1992年生まれ、福岡県出身。幼少期をアメリカで過ごす。日本の高校を卒業後、SUNY(ニューヨーク州立大学)の1つ、New Paltz校へ進学。その後、NYのLIM CollegeにてファッションマーケティングのMasterを取得。

Yuka Okushima(写真右)

1993年生まれ、神奈川県出身。日本の高校を卒業後、LAのコミュニティカレッジへ進学。その後、NYのFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)にてアクセサリー・デザイン専攻を修了。

Instagram:https://instagram.com/beingoxy

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