大多数の反対を得ながらも、EU離脱を今年3月に控えるイギリス。 Britain(英国)とExit(退出)を組み合わせた造語として、Brexit(ブレグジット)と呼ばる、世界的に注目されている政治問題だ。 

そんなブレグジットを間近にするイギリスでは、政界だけでなく、反対を表明するファッション界からの声も多く、中止や再投票を呼びかける活動を行うデザイナーやアーティストも増えてきている。 実際、ブレグジットの影響から、世界ではどのようなことが起こっているのだろうか。 

ファッション、ミュージック、カルチャーといった視点からの影響は? EU離脱で、イギリスが追い求める真の”ディール”とは、一体どのようなものなのだろうか?  

ファッション界からのメッセージ 

イギリス出身のファッションデザイナー、KATHARINE HAMNETT(キャサリン・ハムネット)は、自身のブランドを通じ、反対の声を呼びかけている一人だ。 これまでにも、環境問題や人種差別、平和問題などの社会的活動にも積極的に参加してきたキャサリンだが、ブレグジットに伴ったスローガンTシャツを発表し、話題となった。 

その内容は、「CANCEL BREXIT(ブレグジットを中止せよ)」や、「FASHION HATES BREXIT(ファッションはブレグジットが嫌い)」など、ストレートなメッセージが大々的にプリントされたものである。 キャサリンは、ファストファッションなどの価格競争による労働者の更なる条件悪化や、貧困問題に加え、EU間の緊張問題や輸出入の為替問題により、ファッション業界自体の経営不振を、懸念しているという。 

80年-90年代を代表する世界的デザイナーとして今も尚、イギリスのファッションを牽引しているキャサリン。 反トランプ政権への想いなど、これまでにも多くの政治問題に対しメッセージを発信し続けてきたキャサリンならではの視点で、ブレグジットへの反対表明を掲げている。 プロモーションに関しても自身で着用し、SNS、雑誌のインタビューからTV出演まで、ファッションデザイナーとしてだけでなく、活動家としての意思も表明し、活躍中である。 

そんな彼女は、イギリスのフリーペーパーマガジンのインタビューにて、「あなたが、一つのことに対し記憶に残っているとしたら一体何?」という質問に対し、こう語っている。  

”Having helped fix the world.”

「世界を正す手助けをしたこと」

(Stylistインタビューより)

そんなキャサリンの活動を支持する声は多く、ファッション業界内にとどまらず、多くの人々の賛同を得、その影響力はTシャツを通じ、広がりを見せつつある。 

ミュージック界からのメッセージ  

音楽を通し、反対表明を行った活動も話題となっており、ミュージックカルチャーの多様性や、その歴史の深さを感じるイギリスならではである。 先日1月に開催されたEU離脱協議会議の最中に、ロンドン・ウェストミンスターにある国会議事堂前にて、boiler room(ボイラー ルーム)さながらの雰囲気で、ゲリラDJを行ったのは、 SUATと呼ばれるイギリス人男性のDJだ。 

わずか30分ほどの彼の「Brexit DJ set」は、その場でライブストリーミング配信され、すぐさま世界中で話題になった後、翌日には15万回以上もの動画再生が行われたという。 開始から10分ほどで警察からの注意があったものの、彼のブレグジット反対への意思や、DJを行う意味について話し合いがあり、警察もその活動への賛同の意思を見せたのではないかとされ、セットの続行に至ったという驚きの裏話も存在する。 なぜSUATが敢えて、国会会議中にDJセットを披露したかという理由に、疑問が集中したが、彼はこう語っている。 

“The music… I can’t explain – it just dissipates everything. Every sort of mood or atmosphere, it just dissipates it. “

「音楽…説明出来ないな、それはただ全てを消すものなんだ。あらゆる種類の気分や雰囲気、それはただ消せるんだ。」

(VICEのインタビューにて)

若干21歳のイギリス人の青年から出た言葉からは、ブレグジットへの不安を音楽で打ち消し、明るい方向を見ていきたいという想いが図り知れるようだ。 

国会議事堂前からのDJセットは、音楽を通じ、確実に人々の心へと響いた。 

カルチャー界からのメッセージ  

最後に紹介するのは、ブレグジットを大胆に、ユーモラスに批評するアイルランドのインターネットミーム「Ireland Simpsons fans(アイルランド シンプソンズ ファンズ」である。 現在メンバー7万5千人を誇るfacebook上のグループページでは、アイルランドの政治、ニュース、ポップカルチャーなどを話題に、アニメキャラクターのザ・シンプソンズの画像をユーモラスに用い、ディスカッションが行われている。 

同ミームの多くは、アイルランドの若者に支持されており、その多くには、インターネットを駆使するミレニアル世代も含まれているという。 シンプソンズの画像を用い、ユーモラスにブレグジットを批判する「Brexit-wise(ブレグジットワイズ)」という言葉も生まれているほど、一種のトレンドとなりつつある。 

イギリスとの国家間での歴史を含め、アイルランドにとってもブレグジットは深刻な問題であり、混乱と不安が人々を襲っている中、こういったカルチャー色の強いミームを通し、若い世代は行動を起こしているのだ。 政治的不安を嘲笑することで、明るいムードも生み出している効果もある。 このようなオンライン参加型の社会的活動は、今アイルランド国内を始め、国外でも広がりを見せつつある。 

国民のほとんどが興味を持ち、その動向を懸念している問題でもあるが、彼らが「今信じられる未来」をユーモラスに、前向きに表現している姿からは、パワーが感じられる。 イギリス国家が追い求める”ディール”を、国民自らが再提議し、作り上げていくかのような、動きが今正に目立っているのだ。 次にイギリスで起こることは、どう私たちの世界を変えていくのか、ブレグジットの決行日がいよいよ間近に迫る中、今後の動きにも注目していきたい。 

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