2019年日本公開が決定している「永遠の門 ゴッホの見た未来」。2018年に公開されたアメリカ、イギリス、フランス合作の伝記映画だ。

ここ数年オスカーの顔ぶれにもなった、渋いカリスマ的個性のある俳優ウィレム・デフォーが、オランダ人画家フィンセント・ファン・ゴッホを華麗にも演じている。狂気のもと耳を切り落としたゴッホの印象的な姿が、映画のポスターとして起用され、世界的に現在話題が沸騰中。今年のオスカー、ゴールデングローブ賞、両方にノミネートされた最新作である。海外では既に公開されている国が多いが日本はまだ。話題の映画が日本公開される前に、少し早いが今回ここで特集を組んでみたい。

フィンセント・ファン・ゴッホの伝記映画

フィンセント・ファン・ゴッホは、19世紀後期に活躍したポスト印象派を代表するオランダの画家である。感情を率直に表現するカラフルで大胆な色使いが特徴的。残念ながら彼の死後、特に世界的に注目されるようになったことで有名なアーティストだ。

ゴッホの生涯は、19世紀後半に同じく活躍した画家ポール・ゴーギャンとの友情や、弟テオとの家族愛、狂気のもと耳を切り落とした逸話などが伝記映画になりやすいようで、過去に何度も制作されている。日本の名監督、黒澤明も1990年公開された映画「夢」の中でゴッホの話を取り上げている。

今回の伝記映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」の見所はどこにあるのか。個人的にも大好きな名俳優のウィレム・デフォーがゴッホ役を演じていることもあり、かなり気になる作品だ。

精神病と孤独の苦しみ

晩年、精神病と孤独の苦しみに負われた生涯を持つ画家フィンセント・ファン・ゴッホ。今回の作品は特に、ゴッホの気難しい精神と、それでも自分を信じ作品を作り続ける力強い信念、そして自死に至までの過程が鮮明に描かれている。世界的にも年々と、鬱や精神病患者が増え続ける現代社会、今回の映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」は、ゴッホという一人の人物の葛藤を今のリアルな社会問題と照らし合わせて解釈されている。人間の難しい内面を、まるでゴッホの作品のように大胆な色使いと力強い演技で表現する。

オスカー俳優ウィレム・デフォー

Willem Dafoe(ウィレム・デフォー)

1955年アメリカ生まれ。「スパイダーマン」のグリーン・ゴブリンなど怪しい悪役を演じることが多い彼だが、その異色の演技は彼自身、劇団出身の俳優であることが非常に影響されているようだ。ファッションの世界でも注目されている俳優で、過去に「プラダ」のコマーシャルに出演した経験もある。

「プラトーン」(1986年)、「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(2000年)、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017年)と何度もアカデミー賞のオスカーにノミネートされ、今回またもや選ばれている。昨年のヴェネツィア国際映画祭ではノミネートのみならず男優賞も獲得した。独特の渋い声と、感情表現豊かな彼の演技が、まさにフィンセント・ファン・ゴッホの気難しい異様なキャラクターにマッチしたようだ。

 

伝記映画「バスキア」(1996年)の監督がまたもやアート映画に挑戦

今回の映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」は、過去に伝記映画「バスキア」を監督した経験もある、ジュリアン・シュナーベルが監督した作品だ。出身はニューヨークのブルックリン。バスキアとは監督自身も友人関係にあったようで、アーティストの伝記映画を得意とする映画監督として今回はまた、フィンセント・ファン・ゴッホ激動の生涯を描くことに挑戦している。今回の映画自体も、ゴッホのダイナミックな色使いを参考にアーティスティックな感性を用いて制作されている。

また他にも、ジュリアン・シュナーベル監督は、キューバ出身の作家、詩人レイナルド・アレナスの自伝を映画化した作品「夜になるまえに」(2000年)や、世界最大手のファッション誌『ELLE誌』の編集長であるジャン=ドミニック・ボービーの小説を映画化した「潜水服は蝶の夢を見る」(2007年)などを制作している。まさに、アート映画の達人でもあると言えるだろう。

必ずしも史実に沿ったストーリーにはなっていない。これは私なりのゴッホ解釈だ。

ジュリアン・シュナーベル

アメリカ、イギリス、フランスの合作

映画鑑賞する上で、筆者の私個人的にも興味がある点は、いろいろな国の合作が多いことだ。そこからは、映画の制作費はもちろん、政治的な監修、美術的なセンス、また共通する社会問題などを共有する姿勢が読み解くことができる。フィンセント・ファン・ゴッホ自身もオランダで生まれ、ベルギー、フランスと、移住する国を変えながら生きた自伝を持つ。

グローバル化が進み、異なる様々な現実の中で孤独と葛藤するライフスタイルが主流になりつつある将来。伝記映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」は時代を繁栄したリアル感が我々の興味を刺激する。日本での公開が非常に楽しみだ。

 

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