キプロス出身のトルコ系ファッションデザイナー、フセイン・チャラヤン。宗教的な内戦など社会的テーマを服に投影させるファッションデザイナーとして有名だ。彫刻や建築物ような構築的なスタイルを提供する前代未聞の異色デザイナー。アートとファッションの融合を確立させた鬼才とも言われている。今回は連載、クリエイターの知っておきたい10の事の第一弾、フセイン・チャラヤンについてご紹介する。

1:キプロスってどこ?

キプロス共和国の首都ニコシア出身のファッションデザイナー、フセイン・チャラヤン。キプロスと聞いてもあまりはっきりとどこにあるのか見当がつきにくい人が多いのかもしれないが、キプロス共和国はトルコ南部の地中海上に位置するキプロス島の大部分を占める共和制国家である。

キプロス共和国は1974年以来、南北に分断されており、国際連合加盟国193カ国のうち、192カ国(トルコ以外全て)が国家承認をしている。キプロス島の一部は現在でもイギリス海外領土になっている。トルコ、シリア、レバノン、イスラエル、エジプト、ギリシャの地中海上の中間に位置するキプロス島は、歴史的に、そして現在でも複雑な国際政治状況の中存在している。

2:イギリスへ移民として移住

混乱した社会状況の中で生まれ育ったファッションデザイナー、フセイン・チャラヤンの作品からは、他とは違う何か特別な社会的メッセージが含まれている。また、フセイン・チャラヤンは一家共々1982年にイギリスへ移住し、イギリス国籍も取得している。

3:セントラル・セント・マーチンズでデザインを学ぶ

アレキサンダー・マックーン、ジョン・ガリアーノ、リカルド・ティッシュなどの著名なファッションデザイナーを生み出したことで著名なロンドンの名門校、セントラル・セント・マーチンズ。アートとデザインを幅広く提供する授業が人気の芸術大学だ。フセイン・チャラヤンもこの学校の卒業生として名高い功績を出している。

4:イギリスでの功績

1995年、ロンドン・ファッション・デザイン・アワードで1位を獲得。賞金を得て同年ロンドン・ファッション・ウィークでデビューした。同年アヴァンギャルドの歌姫として日本でも大人気のビョークの衣装も手掛けている。

また、ブリティッシュデザイナー・オブ・ザ・イヤーでは1999年と2000年に2度も賞を取っており、2006年には大英帝国勲章を受賞した経歴がある。

5:アートとファッションの融合

フセイン・チャラヤンのデザインと言えば、その彫刻のような構築的なデザインが印象的。アートとファッションを融合した鬼才として、イギリスだけでなく世界中から高く評価されているファッションデザイナーだ。彼の作品はロンドンのテート・モダンや、ヴィクトリア&アルバート美術館にも展示されており、そのミニマルでエレガントなスタイルがデザイン業界に幅広く影響を及ぼしている。

6:時代にあったアイデア

「肉の切り身をプリントした布」や「ブーケの花ようなドレス」、「形の変わるテーブルのようなスカート」、「土の中に埋もれた服」等、様々な奇抜でコンテンポラリーのアーティスティックなファッションデザインのアイデアを出している。

7:プーマのクリエイティブディレクター

アメリカライオンのピューマがロゴマークとして印象的な、ドイツを本拠地とするスポーツ用品の名ブランドPuma(プーマ)。同じくスポーツブランドとして成功を収めているアディダスとは兄弟ブランドだ。グッチ、バレンシアガ、イヴ・サン=ローラン、ボッテガ・ヴェネタなどを買収したことで話題となった、フランスのファッション業界大手企業体「ケリング」を親会社に持っていたが、昨年2018年、突如売却された。

フセイン・チャラヤンは2008年、このプーマのクリエイティブディレクターに任命されている。デニムシリーズや、プーマが持つ最新テクノロジー技術を用いてデザインされた都会的な服やフットウェア、アクセサリーなどの展開を見せるアーバンモビリティーへ多大な貢献を果たした。

8:大学の講師としての活動も

また、チャラヤンは現在オーストリアの首都ウィーンにある大学、ウィーン応用美術大学の講師としても活躍している。

9:フセイン・チャラヤンの表現と哲学

フセイン・チャラヤンの表現力豊かなデザイン性は、現代社会におけるリアルな感覚とユニークなアイデアの追求から生み出されている。キプロスの複雑な社会環境で育ち、イギリスへ移民として移り渡った彼自身の経歴が、チャラヤンの表現ベースになっている。

10:アートギャラリーへの展示

彫刻として表現された数々の創造性の深い作品はアート作品として、世界中の美術館やギャラリーに展示されている。文化的なアイデンティティー、移民問題、人類学、最新の科学技術、ナチュラル志向、遺伝子学など様々な興味深いテーマを用いて作品を手がける姿勢を持っている。

ファッションの枠を超え、アート作品として表現の幅を広げるチャラヤンの世界。ファッションデザイナーとして、またコンテンポラリーアーティストとしても彼の行方が今後も気になる。

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