イギリスを代表する、コンテンポラリー・アーティストであるGrayson Perry(グレイソン・ペリー)。 現在はセントラル・セントマーチンズなどを含むロンドン芸術大学において、総学長を務めるなど、アートやファッション界において、多大な影響力を及ぼす重鎮的な人物である。 

また、女装を続ける個性的なファッションセンスと共に、アートを通じ、人々のアイデンティティに迫る彼のライフワークは、まさにコンセプチュアル・アートそのものである。 現代のアートシーンを投影し、生きるレジェンドと呼ばれる、グレイソン・ペリーが生涯をかけて追い続けるものとは一体何なのだろうか?  

アーティストとしての道を切り開いた「陶芸」の才能  

Grayson Perry(グレイソン・ペリー)は、1960年イギリス郊外の都市、エセックス出身のアーティストだ。 労働者階級の家庭に生まれ育ち、幼い頃に両親が離婚、決して裕福な家庭では無かったが、アートへの関心と探究心は幼少の頃から人一倍強かった。 そんな彼の心を踊らせていたのは「芸術」とクロスドレッシングと呼ばれる「女装」であり、後に生涯をかけてこの二つのテーマに取り組んでいくこととなった。 大学で基礎美術とファインアートを学んだ後、1980年代にロンドンへと生活の拠点を移したが、家族に見捨てられ家も無かったペリーは貧しく貧弱な青年であった。 その後、アートを学ぶために再び美術学校の夜間授業に通い始めたペリーは、関心のあった陶芸へと魅せられていくことに。 セラミックに鮮やかな配色や、細かく描れた手描きの文章や絵柄など、写真プリント、ダイナミックでありながら凝った手法がされているのが彼の作品の特徴で、型にはまらない自由さが魅力だ。 

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Grayson Perry’s vibrant ceramic vase ‘60s Child’ is a highlight of our Modern | British & Irish Art auction in London in April.⠀ .⠀ ‘In this work, Perry shows his skills as both a craftsman and a social commentator,’ says Alice Murray (@alicemurray_), our specialist and Head of Sale.⠀ .⠀ ‘He has layered risqué 1960s adverts with traditional scenes, creating a confrontation between the traditional pre-war generation and the sexually liberated culture of the post-war “Swinging Sixties”.’⠀ .⠀ Grayson Perry (b. 1960), ‘60s Child’, 1996. Glazed earthenware, 13 in. (33 cm.) high. Estimate: £40,000–60,000.⠀ .⠀ Modern | British & Irish Art – 9 April at Christie’s London.⠀ .⠀ #graysonperry #art #artwork #artist #contemporaryart #vase #ceramic #ceramics #london

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1980年にロンドンの現代美術館で行われた初のグループ展にて、その才能が評価された後、2002年には初の個展をオランダのアムステルダム市立美術館にて開催。 その3年後には、イギリス国内において芸術の最高峰とも呼ばれる名誉あるターナー賞を受賞。 後にはイギリス屈指の美術館テート・モダンやロイヤル・アカデミー・オブ・アーツなどでも個展を開催、キュレーションも手がけるなど、ペリーはアーティストとして名実ともにトップレベルとして認められていく事となった。 

 自分自身をアップデートし続けるための「クロスドレッシング」 

ペリーが陶芸と共に、生涯をかけて取り組んでいるアート活動の一環はクロスドレッシング(女装)だ。 クロスドレッシングとは、性別にあった洋服を着るという、従来社会にある服装的常識に違和感を抱き、自分の性に自由でありたいと考えることから起こる行動、セクシャリズムだ。 幼少期から女装への憧れを抱いていたペリーは、10代の時に姉や母の服を借りたことをきっかけに女装を始めた。 その際、性的興奮と共に、悩んでいたセクシャリティの壁を超え、自身がアップデートされていく衝撃的な感覚を味わったという。 

ペリーは、女装する際には女性になりたいという気持ちを抱きながらも、自身は男性であり続けたいという気持ちも持っていたという。 また異性になりきるという行為は、決して幸せだとは言えなかった幼少期の辛い体験を乗り越えるために、自身で作り出したファンタジーの世界でもあったのだ。 そんな自身のセクシャリティを早くから認め、アートとしてポートレートに残していたペリーは後にロンドンの写真美術館にて、クロスドレッシングにまつわる個展を開催。 妻と子供を持つ今もペリーは、自身のアイデンティティを探求するために女装を続け、アートを通し、同じように悩むトランスセクシャルの人々の支援も行っている。 

アートを通じ、人々のアイデンティティに迫るライフワーク 

陶芸の他にも映画制作に以前から興味を抱いていたペリーは、自身もパフォーマーや表現者として作品に出演していた過去を持ち、テレビなどメディアからもオファーが絶えなかった。 2005年にはイギリスの人気テレビ局Channel4(チャンネル4)のドキュメンタリー Why Men Wear Frocks(なぜ男性はフロックを着るのか)」を発表。 自身の経験を通じ、歴史から紐解く現代のセクシャリズムについてを題材にした作品は高く評価され、イギリス国内の名誉あるドキュメンタリー作品に贈られる、ロイヤルテレビ教会賞を受賞。 

その後も数々のドキュメンタリー作品を生み出し、2014年には再びチャンネル4にて、ドキュメンタリーテレビシリーズ「Who Are You(あなたは誰)」を発表。 人々のアイデンティティに迫り、実際にインタビューを行い、ペリーがアート作品を作り上げるという内容は、まさに彼のライフワークそのものを表現する内容であり、同シリーズは多くの反響を得た。 セクシャリティ、宗教、政治、犯罪など際どいテーマにも、アートを通じ真摯かつユーモラスに取り組み表現する姿は、真のアーティストとして、ペリーの地位を確固たるものにした。 

人々のアイデンティを問い続ける一人のアーティスト、グレイソン・ペリー。 彼が人生をかけて取り組むテーマ、探し続けるものの先には、私たちがまだ見た事の無い世界や、無限の可能性が潜んでいる 

過去、現代、未来と人々のアイデンティティはどのように影響され、変化していくのだろうか。 生きるレジェンドと呼ばれる彼から学ぶ事はまだまだ多そうであり、今後の活動からも目が離せなさそうだ。 

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