https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/08/post-12734.php

8月11日、中国人女優ヤン・ミーがブランドアンバサダーをしていたヴェルサーチとの契約を解除した。原因は、ヴェルサーチが販売するTシャツに、香港とマカオが中国の一部ではなく「国」と表記してあり、「中国への侮辱だ」というものだった。ヴェルサーチ側とデザイナーのドナテラ・ヴェルサーチェは、即「誤りがあった」として謝罪した。

その後、中国人モデル達が同じ理由で次々にラグジュアリー・ブランドを非難したことで、コーチやジバンシー、スワロフスキーまで中国へ謝罪するまでに発展。もちろん、この発端にあるのは現在長引いている香港デモ。これらのブランドの謝罪に対して今世界では、賛否両論の意見が上がっている。長い歴史があるからこそ生まれる問題で、どの国が正しい、間違っているという事を言っているのではない。ただこんなにも政治の問題がファッション業界に大打撃を与えるとは、誰も想像していなかっただろう。今世界で広がる反グローバリズムによって若者の関心は、好きなデザイナーではなく政治的にも賛成できるかが重要となり、ファッション業界は、今後より世界政治に理解を示すことが勝ち残る鍵となる。

https://www.bbc.com/news/business-49315317

知っておきたい『反グローバリズム』とは

そもそも国家間の障壁を取り除き、他の国と支え合う事で、自由化した資本主義をグローバル化と呼んでいた。

しかし近年そのグローバル化がより貧富の差を広げ、自国の利益を減らしているのではないかという懸念から、反グローバリズム(自国を一番に優先する)という考え方が世界で支持され始めたと言われている。2016年頃からイギリスのEU離脱、アメリカでトランプが大統領に就任し、反グローバリズムが欧米で広まり、現在世界中で大きな問題となっている。欧米を筆頭に自国の利益をより追求する動きから、他の国も反グローバリズムに考え方をシフトせざるおえなくなっている。中国ではアメリカとの関税問題も抱える中、香港デモで世界から非難を浴び、自国の利益を守るためにファッション業界にまで政治問題を持ち込んでしまっているのだ。それもあってか多くの若者が海外ブランドでなく、中国国内のブランドにシフトして、海外ブランド離れが進んでいるようだ。

https://mentoryes.com/my/overseas-education/trump-brexit-indian-students-to-benefit-or-lose/

ラグジュアリー・ブランドと中国の消費者

香港とは、元々150年間イギリスの植民地だったが、1997年に中国に返還された。今年で22年経つが、香港は中国の中でも特別行政区となり、独自の法制度や表現の自由も保証されている。

そのため、香港では自身を「中国人ではなく香港人です」と言うほど、香港の独立を願っている。台湾も1990年後、民主化と伴い独立運動が勃発。「中国人ではなく台湾人です」と認識する人が増えていった。それもあって今まで欧米では、独立を希望する香港や台湾を中国の一部として扱うことの方が問題視されていたが、ラグジュアリー・ブランドの経営にとっては、香港や台湾より中国の消費者を失う方が、売上に響くという事を、このニュースが証明している。

https://www.news-postseven.com/archives/20190722_1415361.html?IMAGE&PAGE=1

政治問題がファッション業界をどう変えるのか

現在韓国で日本ブランドに対して“不買運動”が行われている。ユニクロは、政治とは無関係だと言いつつ、「業績には影響が出ている」と発言し、ソウルのお店が9月の中旬に閉店。もう1店舗も賃借契約満了により10月に閉店予定だという。ユニクロは、今年インド進出も果たし世界のブランドとして大成功を遂げているが、“日本のブランド”ということが、業績に響いているのだ。もしも反グローバリズムが益々広がれば、世界で活躍するブランドは、少なくなるだろう。

だからこそ世界のブランドを維持するためには、ターゲット層の”政治的関心”までもマーケティング戦略に取り組まないと、消費者離れは逃れられない。ファッション業界が政治やメディアにコントロールされる前に、消費者である私たちは、物事や世界を客観的に捉え、ファッションを自由に楽しめなければ、世界の才能あるファッション・デザイナーの商品に出会うことは難しくなる。