https://www.instagram.com/p/B1xCULUB2DZ/?utm_source=ig_web_copy_link

今の日本の音楽シーンを代表するアーティストを問われた時、誰の名を思い浮かべるだろうか。最新アルバムは4週連続1位を獲得、そのアルバムを引っさげて敢行された5大ドームツアーを大成功に収めたソロアーティスト。ここ数年にフォーカスして考えたとしたら、『星野源』であると言っても多くの人が頷いてくれると思っている。そんな彼が、ついに1stアルバム「ばかのうた」から昨年リリースされた大ヒットアルバム「POP VIRUS」に至る全楽曲のストリーミング配信を解禁したのだ。

View this post on Instagram

世界中の音楽ストリーミングサービスで、僕のすべての楽曲が聴けるようになりました。ついにこのタイミングが来たなと爽快な気持ちです。これまで、音楽を届ける様々な環境に対して目に見えない壁の存在を感じることがありましたが、今はスッキリなくなり、アナログもデジタルもストリーミングも、それぞれの聴き方で作品に触れてもらえることにワクワクしています。 いつも曲を書き、ひとりで歌っている部屋が、地球全体と繋がったような感覚です。  – -  All of my songs are now yours to enjoy across music streaming services around the world. It's absolutely exhilarating now that everything's coming together! Up until now, I felt like there was some kind of invisible wall in regards to getting my music out, but now that it's gone, everyone can enjoy my music however they like, whether it's through vinyl discs, digital downloads, or through a streaming service — and that's what makes me so excited! It's almost as if the room where I spend most of my days writing and singing songs by myself has finally been plugged into the rest of the world!

A post shared by Gén Hoshino 星野源 (@iamgenhoshino) on

Apple Music、Spotifyを始め、YouTube Music、amazon music、LINE MUSIC、AWA、KKbox、Rakuten Music、Rec Musicといった日本に限らず文字通り世界中で聴けるよう網羅的に、様々なサービスで配信が開始された。

日本人初のBeats1ホスト

特筆すべきは星野源が日本人として初めてBeats 1のホストを務めたということだ。Beats 1とはApple Musicが配信するラジオ番組であり、LAまで赴いて現地で収録されたという。

番組内ではリスペクトする海外アーティストに対しての思いが語られたり、彼の大ヒット曲である「恋」が持つ日本人特有の感覚との関係性などが語られ、他では聴けない興味深い内容となっている。単なるストリーミング配信解禁に留まらず、日本のポップスを世界に伝えていく、その先陣を切る役割も果たしているのだ。

星野源によるサブスク解禁の意義

日本の音楽業界はサブスクリプション(定額ストリーミング配信)サービスへの対応が世界に比べて遅れているとされてきた。欧米諸国では基本的には0時になった瞬間に曲がリリースされ、その日1日で世界中で何万回、何億回再生されたかが翌日には発表されたりする。ストリーミングサービスが盛んになってからまだまだ歴史が浅いこともあってか、ポストマローンやドレイクが新作を出すたびにその記録を破っていくという風だ。このことからもわかるように、世界中でストリーミングサービスは主流な音楽の聴き方になっており、アーティスト側もそこでの再生数を重視している。

今年の6月ごろにある中学3年生のTweetが話題になった。その方の主張を要約すると、月5000円のお小遣いしかもらっていない自分にとって、1枚3000円するどんな曲が入っているかもわからないようなアルバムを買うのはあまりにリスキーすぎると。だからMusic FM(無料の音楽アプリ、もちろん違法)を自由に使わせて欲しいということだった。この中学生の発言によってネット上では大変議論となりその是非が問われ、有名人が意見を言う幕もあった。あるバンドマンはこの話題を皮切りに、レコード会社とのストリーミング配信に関する契約についての不透明さを明らかにした。そのバンドマンはCDの売上に対しては1枚いくらと詳細な契約が交わされていながらも、ストリーミング配信に関しては細かな契約をしたことはなく、何回視聴され、それに対してどれだけの収益があり、いくらが取り分なのかわからないのだという。レコード会社はストリーミング配信を通じて、収益を搾取しようとしているのでは、といった内容であった。一方でそういった細かい話はファンに対してするものではなく、聴き方など何でもいいからとりあえず音楽を楽しんで、といった音楽のあるべき姿を論じる発言も見受けられたりした。様々な意見が出た背景には、それぐらい「音楽の聴き方」が転換期にあるという側面が伺える。

先ほど述べた通り日本の音楽業界はストリーミング配信への対応が遅れている。というか、知らない人が多いのではないかとさえ思う。音楽番組1つにしても未だCDの枚数や、ダウンロードランキングといった指標がメインである。ここで星野源のストリーミング配信解禁の意義を考える。このことによって日本においてもストリーミング配信が主流になっていくことで、上記の問題も解決に繋がるのではないだろうか。中学生の発言に関していえば月500円で世界中のあらゆる音楽が聴き放題になる。バンドマンとレコード会社の問題は、アーティストにとってストリーミング配信が楽曲による最も大きな収入源となれば、そのあたりの契約に関してうやむやにすることは会社側ができなくなる。アーティストにはお金が還元されるようになり、音楽ファンとしては今までなら出会うはずのなかった音楽と出会える可能性が生まれることになるのだ。

POP VIRUSが蔓延する日

以前から彼のような今の日本の音楽シーンのトップを走るアーティストたちが、ストリーミング配信を始めないことには疑問があった。収益的な問題なのか、イメージに関する問題なのか。いずれにせよ何かしらの理由があるのだろうと。しかし、星野源に関しては以前からUS HIPHOP好きを公言している。敬意があるなら、彼らのメインの土俵で何故戦わないのかと思っていた。ストリーミング配信することで、彼らが自身の曲を聴いてくれる可能性も高くなるというのに。

シカゴ出身のラッパーにチャンス・ザ・ラッパーというアーティストがいる。彼は、グラミー賞を獲得した3枚目のミックステープ(上写真)の1曲目で「音楽はみんなのものである」と高らかに歌い上げる。事実彼は自身の楽曲を、Sound Cloudなどの無料音楽配信サイトを通じて、誰でも聴けるようにしているのだ。星野源がチャンスのことを好きかどうか、尊敬しているかどうかは知らなかったが、『POP VIRUS Radio』のプレイリストにはしっかりと彼の曲が名を連ねていた。

今回の出来事は、日本の音楽が世界に広がっていくその1歩目が踏み出されたような気さえしている。そしていつか、星野が尊敬するアーティストたちと邂逅する日が来ることを夢見てもいいのではないだろうか。