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まずはこちらのMVを視聴していただきたい。

真昼なのに蛍光灯

消して出た暦は夏

薄化粧の頰に塩飴

ビニールのカバンが光る

lulu+Mikeneko Homeless /「Asagao」より

ここに至るまで、一切”海に行く”というワードは出ていないのに、海に友だちと行く高揚感と気怠さが伝わって仕方ない。

近年のJ-Popは語りすぎるところがある。日本人の気質というか、優しく丁寧にその思考に至った過程を説明してしまう節のことだ。アメリカのHIPHOPシーンを見て思うことだが、曲が配信された瞬間にRap Genius(ラップジーニアス)に世界中のリスナーが歌詞を書き起こし、引用や考察をみんなで深め、アーティスト自身が今何を見て感じとって楽曲に昇華したのかを探るのが習慣になっている。

語りすぎないアーティスト像を”カッコイイ”ものとして表現することはもちろんだが、リスナー達がそこについてそれぞれ考えを巡らせるだけの”余白”をもたらせてくれてもいる。短歌や俳句の国として、本来日本語楽曲こそ、そうあるべきな気もする。音楽の楽しみ方などそれぞれではあるが、思慮深い、”粋”なものこそ我が国の音楽にあってしかるべきではないか。詞のある音楽の楽しみ方としてとても正しいというか健康的だ。そんな詞を日本語で綴って、歌っているのがlulu(ルル)である。現在23歳。

luluの今日まで

1996年7月10日生まれ。2013年17歳からアコギでの弾き語りを三重や京都で開始。18歳でiPhoneのGarageBandアプリで作曲を始め、2015年高校卒業と同時に上京。同年開催された未確認フェスティバルに準決勝まで進出し、その後すぐにSoundCloud上にアップしていたデモがmochilonとhironicaによるダンスユニット、三毛猫ホームレスの目に留まることとなる。そして同年秋にコラボレーションソング「Watermelon」がリリースされた。同年冬には〈lulu + Mikeneko Homeless〉として初のEP『This Christmas Lovely Day』をtofubeatsらを輩出したネットレーベル・Maltine Recordsから発表。ソロとしては未だGarageBandでの制作を続けているという。2019年夏には結婚、妊娠を発表している。

日常にある感情の余白

2019年9月には「法螺」「HOT」「こどものうた」「ぬるい」という4曲のストリーミング配信を開始した。その中でもタワーレコードが行ったインタビューで「こどものうた」について言及している場面が印象的である。

2年半続けていたクリーニング屋のバイトで上司の理不尽に耐えられなくなって辞めた時に書いた曲です。次の仕事を探すにもあまりに無気力になってしまい山手線に長い間乗ってみたら、同じようにずっと乗っているおじいさんやサラリーマンがいることに気づいて一気に車内で書きました。

毎日毎日同じことの繰り返しでどこにも行かないでプカプカした感じと、そんな自分や周りに対して少し苛ついている歌詞が子どもっぽくて気に入っています。

—『Mikiki』「luluにTOWER DOORSから6つの質問 — 日常に寄り添う歌詞を艶やかな美声で歌い上げるSSW」より—

何かも投げ出してしまいたくなってしまう瞬間の訪れは誰にでもあり得ること。それを自身の気づきから自分ことを”幼稚”だと認めた上で、即席で詞に昇華してしまうあたりが彼女の楽曲に漂う”日常感”の根拠ではないだろうか。

季語ではない季語

冒頭でも述べたが彼女の楽曲は語りすぎない、俳句にも似た感情の余白が存在する。そして日常を歌う彼女は季節をテーマにした曲をいくつもリリースしている。あなたのこれからの季節がどんな境遇であろうと、「This Christmas Lovely Day」越しに彼女の歌声に酔いしれる季節になるかもしれない。