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「自分の心地が良いものを作るために、終わりのない旅を」PULETTEデザイナー・郡司 杏の始まりと休止、そしてこれから

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今年、活動休止を発表した1つのブランドがある。スタイルデパートメント運営のPULETTE(プレット)というブランドだ。そこで今回、立ち上げからデザイナーとして関わる郡司 杏さんに、スタートからこれまで、そしてご自身のこれからについて伺わせてもらった。

 

ブランドの始まりとコンセプト

 

―まず始めに、PULETTEというブランドがどのようにスタートしたのかを教えて下さい。

STILL BY HAND(スティルバイハンド/PULETTEと同社運営のメンズブランド)デザイナー兼社長の柳と元々親交があって、アパレルの大先輩なので、色々相談に乗ってもらったりしていました。ちょうど、前職を辞めて独立しようか悩んでいた時期に、スタイルデパートメントもレディースラインをやるか悩んでいた時と重なって。「じゃあウチでやってみたら」という有難い声をいただいたことで、入社ともにブランド立ち上げを行いました。

 

―ブランドのコンセプトはどのように決められたのですか?

昔から古着も好きで、両親の服をおさがりにしていたんですよ。バッグとか装飾品も借りて自分のものにしっちゃって(笑) 自分のルーツに、“昔から大事にされてきたもの”っていうのがあって、それに自分が影響を受けたものや着たいものを落とし込むのが良いなと思ったので、「お母さんのクローゼットにあるような現代服」というコンセプトにしました。

 

―郡司さんのデザインに影響を与えたであろうお母さんはどんな人だったのでしょう?

うちの母は、どちらかと言うとミーハーでしたね(笑) その時は、気が付かなかったんですけど、日本のファッションが華やかだった時代の良いブランドもの、流行ったものとかが家にいっぱいあったんです。素敵だなって思って、私も勝手に着ていて。母は、当時流行ったものをちゃんと持っていたんだと思います。

あとは、コンセプトとしては“お母さんの”なんですけど、私としては母の女性らしい素敵なものと、父のメンズ目線の良いものをミックスして着るのが好きがったので、父からも影響を受けていますね。

 

―だから、デザインにも形や素材でメンズっぽさが垣間見えるときがあるんですね。

そこが大きいと思います。ジャケットとかスラックスとか、女性の服には多くないので。

メンズの服も凄く好きで、古着とかをよく見るんです。背が高ければ、メンズの服でも上手く着こなせたりすると思うんですけど、私は小柄なのでそれが難しくて。でも、その着たいのに着れないフラストレーションが、このメンズの良さ活かして女性が着られるものを作れないかなという、ものづくりをしたいと思ったきっかけに繋がりました。

 

PULETTE 2018 SS

 

分かりやすい服ではないからこそ、細やかな気遣いを

 

―メンズとレディースの良い両面を取り入れたデザインの中で、一番大切にしていることって何なのでしょうか?

心地よさですかね。多分、PULETTEの服って、パっと見て分かりやすい煌びやかな服ではないんですよ。というよりは着た時に、「あ、綺麗に見える」って美しいと感じる、心地良く見える感覚を大切にしています。着ていてストレスを感じない、シルエットの細かいディティールですね。

自分が作って着ているときに、「ここがもう少しこうだったら、きっと着やすい」とか「身体のラインが綺麗に見える」とか、ちょっとした気づきに意識して。例えば、縫製としては同じなんですけど、トップスの脇のラインを少し前にするだけで、動きやすさが変わったり。ポケットが付いているとしたら、手の入れやすさだったり。ちょっとしたところです。

 

―確かにPULETTEの洋服からは、ちょうどよい心地良さを感じます。ですが、毎シーズン、色はとても印象的ですよね。どのように選んでいるのでしょうか?

シーズンごとに、その時影響を受けたものが一番強いですね。最近、料理をするのが凄く好きなんですけど、その時にでる自然の色が美しいなって感じて、作り終えた瞬間に感動するんですよ。例えば、ビーツとかって、スープにしてもその鮮やかさは残ったままなんです。そこで赤に負けないくらいの緑を指したりすると、とても美しくて。

あとは、街に出た時に感じる、新しいビルと古いビルとの共存するバランス、地面の劣化した色と修正した色の濃淡。ふとした時にでハッと感動することがあって。キャンプでの紅葉はもちろん、川の石の独特な色とかも。ナチュラルな素材感と都会的な素材感が交じり合ったものが好きなので、ここ何シーズンかはそれを表現したいと思って作っています。

 

PULETTE 2017 FW

 

 

PULETTEは2018AWをもって活動休止を発表

 

―これまで8年に渡って、色んなPULETTEのお洋服を作ってこられたと思います。そんな中で、一番印象に残っているコレクションはいつのものになるのでしょうか?

一番最初のコレクションですかね。自分でコンセプトの段階から考えて、ブランドをやるっていうのが初めての経験だったので、思い出深いんです。

その時の服で、自分自身今でもよく着ている服があって。ピンクベージュのとろみのあるオーバーサイズのシャツなんですけど、羽織りとしても着られてちょうどいいんですよ。ビックリするようなデザインじゃないんですけど、良い塩梅をついていて、長く愛せる良い商品作れたなって思っています。

 

PULETTE 2011 SS

―そんなPULETTEは18AWをもって休止を発表しましたね。それはなぜ決まったのでしょうか?

PULETTEは、私がデザイナーを務めるブランドではあるんですけど、会社の色んなメンバーとやっているブランドなんです。だから、みんなで話し合って、1度お休みをして、もう1度見つめ直して次に進むのがいいねって。その方が、より良いモノづくりが出来るのかなと思っています。

最初は右も左も分からなくて、周りに教えてもらいながらやっていたんですけど、今はもう少し違う目線でスタートできるかなって思います。私自身も今は自分を見つめ直していて、自分の好きなものをもっと明確にさせたいので。

 

―ブランドをやっていて、幸せだなって感じる瞬間はどんな時でしたか?

展示会やセレクトショップに置いてもらうときに店頭に立つことがあるんですけど、そこでお客様がPULETTEの服を手に取ってくれるときですね。今までやってきて良かった、沢山の中から選んでくれて有難うって、凄く幸せを感じます。

モノづくりをしていて素直に喜べる瞬間って、実は少なくて。工場からサンプルが上がってきても、可愛いって思った次の瞬間に、さあどうしようって思うんですよ。もっと良くなる方法はないかって、ずっと自問自答していて。展示会を終えた後にも、縫製の細かい部分とか、もっとこうできないかなって修正したり、お客様の元に届くまでずっとやっているくらい(笑)

PULETTE 2018 FW

郡司 杏がデザイナーの仕事を続ける理由

 

―郡司さんのこれからの活動について教えて下さい。

今は、STILL BY HANDのサポートをしたり、デザイナーとしてのお仕事は色々行っている状況です。これから自分がどうしていくのかは見えていないんですけど、楽しくいたいなって思いますね。何している時が一番楽しいかを自問自答したときに、やっぱりモノづくりしているときだなって再認識していて。モノづくり、服、どうなるかちょっと分からない状況ではあるんですけど、何かの状況で今後もモノづくりをしていけたら良いなって思っています。そのために、自分の好きなもの、自分が作りたいものを深めたいです。

 

―郡司さんにとってデザイナーとはどんなお仕事ですか? 何のためにモノづくりを続けるのでしょう?

考え続けて、答えのない旅をずっとしている人ですかね。ドリスヴァンノッテンの映画を見た時に凄く共感したんですけど、自分が作ったものに対して“なんて素敵なものなんだろう”って思う瞬間のために、ずっと考え続けるんです。その感動の後、またすぐ考えるんですけど(笑) その自分がハッとする美しさに出会うために、心地の良いものを作るために、私は考え続けて、終わりのない旅をしています。

 

8年続いたPULETTEというブランドは、沢山の人に惜しまれながら2018AWでの休止を発表した。もしかしたらこの先、私たちは彼女の手掛けるPULETTEの服を見ることができないかもしれない。しかし、終わりのない答えを求めて、どんな形であれ、彼女はこれからもモノづくりを続けていくのであろう。一瞬の感動に出会うために。

 

 

 

郡司 杏(ぐんじ・あん)

杉野服飾大学を卒業後、某企業にてレディースとキッズのデザインを担当。2010年、スタイルデパートメント入社と共に、PULETTE立ち上げから8年に渡りデザイナーを務める。「お母さんのクローゼットにあるような現代服」をコンセプトに掲げ、色あせない定番とコンテンポラリーをきかせた服を提案している。

 

Instagram:@p_u_l_e_t_t_e / @gunjian

HP:pulette.com