2月14日ニューヨーク・ファッションウィーク7日目は、否が応にもアメリカを強く意識する一日であった。

映画のヒロインへのオマージュとなったTory Burch(トリー・バーチ)と、アメリカの西部開拓時代のウエスタン調で構成したCOACH(コーチ)のコレクション。

デザイナーのTory  Burchは今季のコレクションを、映画『フィラデルフィア物語』(原題:The Philadelphia Story)のヒロイン、キャサリン・ヘップバーン演じるトレイシー・ロードの現代ワードローブだと説明した。

『フィラデルフィア物語』は1940年に上映されたブロードウェイ劇を映画化した作品。

ストーリーは、フィラデルフィアに暮らす上流階級の令嬢トレイシーの再婚前に元夫と許嫁、彼女の家族やゴシップ誌記者とのいざこざを描いたラブコメディ。

映画の中の衣装は、コルセット付きのロングドレスやボリュームのあるフリル、部屋着もシルクのローブと、品性がありゴージャスなアイテムばかり。

Tory Burchは白黒映画の中のトレイシーから想像を膨らませ、現実世界に今暮らしていたら好んで着るであろうコレクションを発表したのだ。

ファーストルックはTBのロゴが入った純白のウールコートにシャツ、シルクのパンツと無垢な雰囲気。

柔らかくどこかあどけなさの残る全身ホワイトのルックは続いたが、フォックスファー、ラビットファー、チベットファーと質は極上。さすが上流階級。

5ルック目でついにカラーが現れた。トレイシーのアイコンルックでもあったロンパースは、イエロー・レッド・ブルーと原色系のカラーでバレエダンサーの絵がイラストされていた。

本来部屋着として着用するロンパースだけにリラックスした着心地の良さはあるが、シルクを用いて、上半身はタイトにボトムスはボリュームを出すことで、部屋着ではなく普段着のワードローブへと追加された。

その後も深みのあるブルー、ブラウン、グリーン、ブラックと白黒映画から飛び出したトレイシーは色を味方につけたようだ。

イギリス貴族を想起させるチェック柄も多様された。ルック終盤に登場した、ボタンでアールデコ調の模様を施したドレスは、ヨーロッパ様式でもありどこかオリエンタルな雰囲気も醸し出す。

グローバル化が進んだ現代では、トレイシーはアメリカだけでなく世界各国の服飾文化に影響されたワードローブが構成されるのかもしれない。

アメリカを代表するブランドであるCOACHは今季、就任3年目を迎えるイギリス出身のクリエイティブ・ディレクターStuart Vevers(スチュアート・ベバース)によって国のルーツを探求し、アメリカに捧げるコレクションを発表した。

ベースとなるのはカウボーイ風や西部開拓時代のウエスタン調。

COACHのシグネチャーアイテムもパッチワークやアップリケで装飾を加えたり、柔らかい素材やふんわりとしたボリュームを作って、これまでのコレクションの鋭さから角が取れた印象を受ける。

ムートン素材を使ったバイカージャケットには鷲のアップリケを。スカートには颯爽と走る馬のプリントなど、西部劇に登場するヒロインにしてはセンスが良すぎる。

ウエスタンチェックのドレスは、種類・カラー豊富に登場し、ノルディック柄のニットやフリンジの装飾がついたレザーベストと合わせられ、ますますウエスタン調の勢いが増した。

 しかし中盤から多く登場したフラワープリントやアイコニックなアニマルやスカルのアップリケがついたオーバーサイズのストリート感のあるダウンが、モダンなスパイスとして、コレクション全体をいい塩梅に仕上げた。

数分のランウェイショーはまるで、華やかな西部劇映画を観ているような感覚。

たとえアメリカ人ではないとしても。アメリカの歴史に親しみがないとしても、ノスタルジックで親しみを感じられる内容であったし、フィナーレを迎えるのが残念だった。

19世紀、西部開拓時代から始まったアメリカの歴史。夢や野望を持った移民たちによって開拓されたアメリカの姿は現在、大きく変容している。

現実に目を向けるとあまりにも酷で先の行方が見えないが、少なくともCOACHは夢と野望を全ての人に与えられるリベラルなブランドであり続けるだろう。