「服が売れない時代」と言われて久しいが、毎年世界には多くのファッションデザイナーが生まれている。

潮の満ち引きが激しい業界ではあるが、それでも尚ファッションに夢見て、ファッションを通して自身の想いを発信しようとするデザイナーは多いのだ。

【新進デザイナー】の連載では、独自のコンセプトを武器に荒波のファッション業界に挑む、注目株のデザイナーのリアルな声を訊く。

第一回目はパリを拠点に活動するスニーカーブランドVejaの創業者。

今では当たり前のように耳にする”サステイナブル”というキーワードを最初にファッションへと引用した、先駆者だと言われている。

Vejaの理念と美学、そして彼らのゴールとは。

創始者2人は当時24歳のミレニアルズ

僕たち二人の出会いは中学生の時。当時はただの友人だったのが大学で親友になり、今ではビジネスパートナーであり兄弟のような存在です。

中高大と進み、環境問題や開発経済といった事柄に関心があり、同じ方向を向いていました。

大学を卒業したらニューヨークにある銀行でインターンをしたんですが、二人とも「これは本当にしたいことではない」と感じていたんです。

そして、もっと根本的なことに取り組まないと世の中をよくできないと思うようになり、二人で社会事業を学ぶために一年旅に出ました。

その時に出会ったのが、今も取引を継続しているブラジルのオーガニックコットン農家とゴム農家の人です。

自らの手と足を使ってアマゾンの密林の中、自然に自生するパームツリーから採取していて中間業者をカットして直接取引することで、正当な価格で販売することができる。

さらに、そのゴムも自分たちで精製することで精製業者を挟む必要もない。

無駄なコストをかけずにフェアトレードで市場に出すことができ、農家にも正当な労働条件で高い賃金を支払うことができる。

Vejaを立ち上げて今年で12年目になりますが、年に一回以上は彼らの元を訪れて、直接コミュニケーションをとることにしています。

そうやって人間関係を築いて、ともに成長していくことが重要だと考えています。

持続可能なエコフレンドリーな製造過程

年に一度か二度、新しいデザインを発表しているんです。

キャンパス地からレザー、さまざまな素材を用いたスニーカーを作ってます。

スニーカーに欠かせないゴムの素材は前途したブラジル農家からです。石油に由来する石油ゴムではなく天然ゴムを使用することで、森林伐採を防ぎ環境保護にも繋げています。

数年前に出したのは、100%リサイクルペットボトルから抽出したコットン生地のスニーカー。

食用魚の捨てられてしまう皮を生地として採用したものもあります。

定番で出しているレザー素材は、ヴィーガンレザーを使用していますが、まだ全ての素材がエコというわけではないし、まだまだ課題は山積みです。

大きな花を咲かせることよりも、しっかりと根を張らせることが僕らの目的です。

持続可能で長く愛されるものを作るには、時間もかかるしリスクもあるから少しずつ太くて立派な根に育てていくつもりです。

 

広告宣伝一切なし。マーケットを読み解く鋭い審美眼

24歳でVejaを立ち上げてから13年の間、広告は一切打たずやってきましたが、口コミで知ってくれる人が増えていき、エコフレンドリーやサステイナブルというコンセプトに賛同してくれる人もいれば、単純にデザインを気に入ってくれて手にとってくれる人もいます。

コンセプトを全面に押し出しているわけじゃないからVejaに惹かれる理由が何であれ嬉しですね。

今は消費者は、安価で質の低いアイテムにはすでに飽き始めていると思うんです。

ブランドの理念やその向こう側にある背景も含めて良質なものを求めているし、マーケット自体も変わりつつあります。

僕らがVejaを立ち上げた13年前とでは、インターネットの発展を見ただけでも変化は明らかです。

ダッカ近郊で起きたビル崩壊事故(通称:ラナプラザ崩壊事故)が大きなきっかけにもなり、大手衣料品業者が劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して利益を上げている状況が浮き彫りとなって、それまで当たり前に存在していた社会の亀裂に多くの人が気付き始めていると思います。

Vejaが歩む長い旅の行く末

7年前にオープンした『Centre Commercial』では、同じゴールを掲げているような、エコフレンドリーでデザインの良いメーカーのアイテムだけを取り扱っています。

今置いているのはPatagonia、Norse Project、Gkeroなど欧米のブランドを60ブランドほど。

良質で長く使える、お金をかける価値ある物を求める人に向けたショップとなっています。

過去にはブラジルのストリートアーティストのDerlon(デロン)や、フランスのメンズブランドBLUE DE PANAME(ブルー・ドゥ・パナム)とのコラボレーションを発表し、ショップでイベントを開催したこともあります。

Centre Commercialで行われたVeja × BLUE DE PANAMEのイベント

ただのショップとしてだけではなくここで人々が出会い新たなものが生まれていく、そんなムーブメントの引き金となる場所を目指しています。

地元に根付き、まずは僕らの周囲の意識を変えていく。そして国へ、世界へと繋げていくこと。

この目標は長い旅のようなものです。

これまで歩んできた道のりに満足しているし、自信にもなっていますが、まだ旅の30%しか達成していません。

始まったばかりです。

少しずつ一歩ずつ、しっかりとした基盤を築いて、これからも仲間とともに旅を続けていこうと思うます。