「服が売れない時代」と言われて久しいが、毎年世界で多くのファッションデザイナーが生まれている。

潮の満ち引きが激しい業界において、それでも尚ファッションに夢見て、ファッションを通して自身の想いを発信しようとするデザイナーは多いのだ。

連載企画【新進デザイナー】では、独自のコンセプトを武器に荒波のファッション業界に挑む、注目株のデザイナーのリアルな声を届ける企画。

第二回目は、イスラエル発祥のオートクチュールブランドGalia Lahav(ガリア・ラハブ)の創業者。

日本ではその名はまだ知られていないが、欧米や中東では“マーメイドの王様”との愛称で、花嫁の憧れのブランドとして名高い。

オフィシャルインスタグラムアカウントでは160万人以上のフォロワーを持つ(2017年7月4日現在)。

2017春夏コレクションより、パリ・オートクチュール・ファッションウィークにてショーを開催し、ますます世界から注目を浴びている。

彼らの武器は大胆かつ冒険的なデザインと、繊細な手仕事が織りなす技。

ファッション業界の中でも一際華やかで贅沢な作品を生み出し続けるが、ブランドの始まりは「イスラエルの小さな街で個人経営のレースデザインから」という意外な歴史を持つ。

Galia Lahavが歩む軌跡、そしてブランドの魅力に迫った。

 

個人経営のお店がオートクチュールブランドへと成長した発端

針子だった両親の元、ロシアで生まれました。

家族の影響もあって、幼少期から裁縫やデザインに興味がありましたね。学生として数年アートを学んだのち、イスラエルのアッシュドッドという街でレースのアップリケを制作・販売するお店をオープンしたのが30年ほど前。

お店の運営を始めてからすぐ、花嫁のお客様に「あなたが作るオリジナルのレースを使って、オートクチュール(一点物)のウェディングドレスを作って欲しい」とリクエストされたのです。

リクエストにお応えしてウェディングドレスのデザイン、制作をしているとリクエストはどんどん増えていって。

お店のオープンから2年後にはウェディングドレスのデザイン、制作を手がけるブランドへと変わりました。

彼女たちの声が、私のお店をオートクチュールブランドへと押し上げたというわけです。

 

人生とビジネス、全てを共有するパートナーとの出会い

ブランドとして成長を続けて10年経った頃、教え子だったSharon Sever(シャロン・シーヴァー)をデザイン・パートナーとして正式に迎え入れました。

彼はパリ・アメリカン・アカデミー(Paris American Academy)でファッションを専攻し学士号を取得した後、Christian Lacroix(クリスチャン・ラクロワ)、 Pierre Balmain(ピエール・バルマン)、 Alaia(アライア)、 Balenciaga(バレンシアガ)にてオートクチュールドレス制作の現場で経験を積んでいます。

彼が私のブランドに入ってから、制作に対する情熱やデザイン、アート、クリエーションなどさまざまな考えを共有するうちに、同じ方向へと進める人だと確信したの。

彼だけではなく、チーム全体で互いに切磋琢磨しながら歩み続け、今に至ります。

右:ガリア・ラハブ 左:シャロン・シーヴァー

 

ドレス制作に欠かせない“親密さ”という要素

現在、Galia Lahavのホームスタジオはイスラエルのテルアビブにあります。

100人以上の従業員で構成され、各分野の一流専門家が揃っていると自信を持って言える。

切断、縫製、デザイン、マーケティング、コミュニケーションなどのすべてをここで行っています。

ヨーロッパとアメリカなど全世界にある約40店舗へと出向いてお客様とミーティングを重ねたり、世界中で開催するトランクショーのために旅へと出ていることも多いですね。

しかし、チームとコミュニケーションをしっかり取ることをとても大切にしています。

ウェディングドレスの制作において、“親密さ”は不可欠な要素だというのがずっと変わらない私の哲学。

どんなに高い技術を持っていても、お客様、チーム全体、そしてドレスそのものと“親密”でなければ最高峰の一着は生まれません。

全てハンドメイドのオートクチュールドレスというのは、着用する人にとっても作り手においても、それだけパーソナルな物ということ。

見栄えの美しいドレスだけでなく、心を揺さぶるような感動を与えるのも、お客様に対する私たちの使命だと考え歩み続けています。

 

 

人生の最高の瞬間を快適に彩るドレス

レースのアップリケから始まったという原点は、Galia Lahavのドレスに今も息づいています。

手縫いのレースアップリケからあらゆる複雑なビーズの細部まで、その人にとって完璧なオートクチュールドレスを生み出すことが常に目標。

いかに技術の高い繊細な技を駆使しているかは、言葉では説明しきれないし、一度目にして頂ければきっと分かるはず。

また、ウェディングドレス制作においては、体にファーストクラス級のフィット感を味わってもらうことも欠かせない要素というのが私たちの理念です。

ウェディングという祝いの席において、快適さと贅沢さを兼ね備えた一流品質のドレスを提供するというのも、創業当初からの変わらぬ想い。

一切の妥協なく、愛情込めて制作された一着こそが、女性にとって人生の最高の瞬間に身につけるにふさわしいドレスだと信じています。

 

好奇心と化学反応が生んだ新コレクション

7月3日(現地時間)パリで発表した新コレクションは『好奇心の戸棚』と銘打って、新たな挑戦にも取り組みました。

世界の驚異や海に生きる生物などからインスピレーションを受け、現存するあらゆる物を再発見するかのごとく、私の中に生まれる好奇心を追究してデザインしました。

なぜなら、私を前へ前へと突き動かしてくれるのは好奇心だからです。

テクノロジーの進化によって生まれたテクニカルなガーメントも用いながら、カクテルドレスやウェディングドレス、カジュアルなラインも作りました。

好奇心が導く先で、思いもよらぬ化学反応が起きて生まれたコレクションとでも呼ぶべきでしょう。

 

ドレス作りは「花嫁の夢を叶えるお手伝い」

お店から始まり30年以上デザインを手がけている私が、制作において最も好きな過程は、花嫁が幼少期に描いていた結婚式のファンタジーを思い起こさせ、ドレスへと落とし込む作業です。

彼女たちが長年夢見てきた世界観を分かち合い、その夢を叶えるためにドレスを通じてお手伝いできる私は、とても幸せだなと感じます。​​​​​​

だからこそGalia Lahavのドレスは、ドラマチックで幻想的なデザインを目指しています。

春夏・秋冬とシーズン毎に新たなコレクションを発表していますが、一貫して変わらないのは“夢を叶える”ドレスであるということ。

これからも、夢と現実の境界線をも曖昧にしてしまいそうな、ドリーミーなドレスを生み出し続けます。