連載企画【新進デザイナー】

第五回目は、ロンドン一の期待の新星Molly Goddard(モリー・ゴダード)のデザイナー。弱冠28歳の彼女は、ザ・ファッション・アワードの若手デザイナーの登竜門ブリティッシュ・エマージング・タレント部門に2度ノミネートされ昨年2度目に受賞を果たし、今年度のLVMHプライズのファイナリストにも選出された、ファンタジーを語る絵本から飛び出してきたかのような、チュールとタフタがミックスされた華美で退廃的なドレスがブランドのシグネチャーだ。

しかし、本人は「フリルやチュールがついているからといってか弱いプリンセスを演じたいわけじゃない。女の子らしさが残っていても、力強くタフで大胆なアティチュードは共存する」と語る。衣装ではなく洋服だと定義すべきMolly Goddardのコレクションは、ほぼ手作業で作られている。技術やデザインは学校で学んだが、それ以上に自身でトレーニングを積み、ロンドンの芸術大学セントラル・セント・マーティンズ(Central Saint Martins)を2014年に中退しブランドを立ち上げた。

今回はデザイナーのモリー・ゴダードに、ブランド立ち上げから現在に至るまでの経緯、自身のブランドについて詳しく訊いた。

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Q:Molly Goddardの洋服は一見フェミニンにカテゴライズされますが、ジーンズやスニーカーと合わせてスタイリングしている点においては、ただのフェミニンには落ち着かないというブランド像が見受けられます。自身のブランドを通して、どのような考えを表現するためにデザインを手がけていますか?

プリティやガーリーよりも、フェミニンという言葉に興味があります。けれどそれは“可愛い”というこれまで概念とは少し違うんです。フリルのついたピンクの服でも、タフで力強い女性らしさを出すことはできるという考えが根本にあるからでしょう。新しい女性らしさの概念=フェミニンを打ち出したいと思っています。

Q:例えば、Molly Goddardの洋服を可愛く着こなすのではなく、カッコよく着こなすといったような?

その通り。身に纏う洋服によって、気分やアティチュードが変化しますよね。私の洋服を着た人には、プリンセスのようなスウィートな気分になるだけでなく、もっと潜在的な部分にあるアイデンティティと繋がり、居心地よくなって欲しいのです。

Q:具体的なスタイリングとは?

イブニングドレスのようなゴージャスな洋服でも、着崩して普段着として昼間に着ることだってできる。むしろ昼に着飾って夜にカジュアルダウンさせたり、美しいだけではなく少し廃れた部分を持っていたり、かといって黒やグレー一辺倒で着やすいだけの服に終わらせたくはないんです。なる要素がぶつかり合ったり、予測できない着こなしで、ある種の女性らしさを表現したいのです。私自身の普段着も大抵、ジーンズの上に自分が作ったドレスを着て、スニーカーといったスタイルばかりなんですよ。

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Q:ブランドの女性像を教えてください。

女性らしさがあって、自信に溢れていて、細かいことは気にせず気取り過ぎていない、面白い女の子かしら。いつもショーやプレゼンテーションで起用するモデルはそういうタイプで、彼女たちの個性と混ざり合って服にも新しい側面が生まれる気がします。

Q:ターゲットにしている年齢層はありますか?

年齢によって服が制限されるは考えていません。幅広い年齢層の女性像を念頭に置いてデザインしていて、特に2017AWのコレクションは誰でも着られる服を考えて手掛けました。

Q:単にスウィートなだけではないあなたの服は、ほぼ手仕事で制作されていますよね。熟練したクラフトマンシップを感じられますが、服作りやデザインはどのように学んだのですか?

セントラル・セント・マーティンズのニットウェアデザインで5年間学び学士を取得しましたが、修士過程を中退してブランドを立ち上げました。学校でファッションを勉強したけれど、それ以上に自分で勉強し実践的なトレーニングを重ねました。図書館へ行って、洋服だけではなく建築物やオブジェクトなどたくさんの画像を集めたり、買ってきた服を解体したり、さまざまなテクニックを調べることもトレーニングかもしれません。トライアンドエラーを繰り返しながら、まだまだ技術は磨いていく余地があると思っています。

Q:学生時代にブランドを立ち上げたのですね。デビューコレクションからチュールやフリルを用いていましたが、なぜそれらをシグネチャーにしたのでしょうか?

ブランドの軸となっているフェミニンなデザインは、女の子向けのベビーや子供服から着想を得ました。チュールを用いたのは、単に単価が安かったからです(笑)。何層にも重ねることで違う風合いやカラーを生み出してくれるところにも惹かれましたね。

Q:あなたの服を語る上で欠かせないのは、“ノスタルジア”というキーワードではないでしょうか。歴史的な過去の衣服からインスパイアされることも多いと以前に語っていましたが、デザインに取り掛かる際何から手をつけるのですか?

頭の中に浮かんだなんとなくのイメージを明確化させていくために、図書館や美術館へ足を運びます。何もアイディアが出ない時や迷いが生じた時なんかも。今年7月にイベントでランウェイショーを開催した、世界最大の装飾美術館ヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)には子どもの頃から学生時代も、よく行っていました。お気に入りなのは美術図書館で、アートブックや評論集、歴史書を取りとめもなく眺めたりします

Q:図書館で読むのはファッションの書物だけではないのですね?

そういう時に手に取るのはファッションに関連した書物でないことが多いですね。例えば歴史書の中に出てくるヴィクトリア調のドレスであったり、建築の本で取材に答えている建築家の洋服であったり、着る物に着目してしまう節はあります。けれど建築物、インテリアなど洋服だけではなくありとあらゆるものからインスピーレションをもらいます。

Q:美術館ではどのような作品がデザインに活かされるのですか?

心を惹かれるのは、ものすごく手が込んでいるのに実用的ではないもの。美しい絵画やオブジェクトを見て、どんな時代を生きたどんな人が何を想い作ったのだろうと想像するのが好きです。さまざまな視点を持ち、過去からインスピレーションを汲み取り、創造やアイディアをさらに膨らませていくことでコレクションのイメージがかたどられていきます。

https://www.dnamag.co/home/inside-molly-goddard-studio

Q:自分の中でコレクション全体のイメージができたら、次の段階はデザイン画に取り掛かるということですか?

イメージがある程度できたら面白そうな生地を探して、実験的に服を作っていきます。デザイン画を描いて工場に送ってサンプルを委託するということはしないわ。

Q:これまで様々な生地を用いてドレスを制作されてきましたよね。この先新たに作ってみたい洋服はありますか?

もともとニットウェアがすごく好きなんです。ただ制作してくれる工場を見つけるのが難しくて……。

イギリスにある優秀な工場で、楽しく一緒に取り組んでくれるところをまだまだ探すわ。

Q:ショー直前でもいつもリラックスした表情で本番を迎えている印象が強いのですが、それは”楽しく”一緒に取り組んでいるチームがいるからでしょうか?

身近な人たちに囲まれているおかげかもしれません。ビジネスパートナーは、プライベートのパートナーでもある恋人です。スタイリングを担当するのはスタイリストの妹、ショーの責任者は母で、グラフィックデザイナーである父がそれを会場のセット作りを手助けしてくれています。スタジオで働いているクチュリエたちは衣装作りを勉強してきた人たち。 細かいところまで目が行き届き、洋服にしては完璧過ぎるほどしっかり作り上げてくれます。

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Q:最後に、デザイナーとして今後の展望を教えてください。

これからも引き続き、ブランドMolly Goddardを通して、フェミニンやプリティといった“女性らしさ”の概念を覆していきたいですね。加えて言うなら、今年のヴィクトリア&アルバート博物館でのイベントや、過去に行ったロンドンの現代芸術センター(ICA)やテート・モダン(Tate Modern)でのショーやプレゼンテーションのように、ファッションのアートとしての側面も見せられたらいいなと思っています。ショーではインタラクティブな見せ方をしていきたい。

そのような要素も持ち合わせる反面、あくまで普段着に着用できる洋服として作り上げていきます。