パリ・ファッションウィーク会期中の10月3日、イヴ・サンローラン美術館(Musée Yves Saint Laurent Paris)がオープンした。

オープン前に開催されたプレス・プレビューには世界中から集まったジャーナリストやエディターが集結。

ここは、20世紀最も大きな影響力を持ったデザイナー、イヴ・サンローランの輝かしい歴史に触れられる場所だ。

同美術館が位置するのはマルソー通り5番地。

創業デザイナーのイヴ・サンローランが、1974年から引退する2002年まで制作活動を行い本拠地としていた建物を改築した。

改築は、財団の展示に多く携わってきたナタリー・クリニエール(Nathalie Crinière)とインテリアデザイナーのジャックス・グレンジ(Jacques Grange)が手掛けた。

展示スペースは2倍になり、旧クチュールハウスやデザインスタジオを再現したスペースもある。


美術館設立のプロジェクトは、彼が他界した2002年から計画されていたという。

イヴ・サンローランの生涯のパートナーとして彼を支えた実業家、ピエール・ベルジェ(Pierre Berge)が発起人で「彼の記憶を形として残すことを決めた」と、設立の理由を語った。

現在財団が所有している服飾品約5000点、アクセサリー約1万5000点、デザインスケッチ数万点のアーカイブを企画展ごとに展示していくという。

デザイナーにゆかりの深いモロッコのマラケシュ、マジョレル庭園に隣接する立地にも同様の美術館を10月19日に開館させる。

マジョレル庭園はサンローランとベルジェの2人が1980年に購入・保護し、現在では年間80万人が訪れる観光スポットとなっている。

インスピレーションを求めてマラケシュに足繁く通っていたデザイナーの意思を汲み取り、「2人の思い出の地に美術館を設立することにした」とピエールはコメント。

マラケジュの美術館のデザインはBALMAIN(バルマン)の店舗デザインなども手掛けるStudio KO(スタジオ・コー)によるもの。

美術館は周囲の街と同じような色と素材で建設され、街の景観に溶け込むようにデザインされた。

マラケシュの美術館は約4000平方メートルで、常設の展示スペース、企画展示スペース、研究図書館、カフェ、150席の講堂などが入る。

すでにオープンしたパリの美術館で現在展示されているのは50におよぶアクセサリーやスケッチ、写真や動画など。

ファッションやブランドの歴史に加え、20世紀のオートクチュールの伝統を讃える内容で構成されている。

さらに、当時をよく知るファッション業界人や顧客、クチュリエによるインタビュー映像が放映されるスペースも設けられている。

忠実に再現されたデザインスタジオは、無防備に置かれたメガネ、描きかけのデザイン画、椅子にかけられた上着……。今にもデザイナー本人が姿を現しそうな風景だ。

印象に残ったのは、入り口近くに展示されているクチュールドレスたち。

マラケシュやアフリカ、アジアからのインスピレーションによってデザインされたそれらは、異国情緒溢れる、魅惑的な空気感を一着一着纏っている。

今見ても新鮮さに溢れ、圧倒されるドレスの美しさは、サンローランの偉大さを物語っているようだ。

ココ・シャネルが女性に自由を与え、イヴ・サンローランが女性に力を与えたとしばしば称される。

時代が移り変わっても彼の力は健在で、今なお女性に寄り添ってくれる存在。

同財団は2019年から20年の間に日本、韓国、オーストラリアで展覧会開催を企画している。

開館に尽力したピエールはオープンを見届けることなく先月、86歳でこの世を去った。

しかし、イヴ・サンローランの遺産を後世に伝えたいという彼の遺志は未来に受け継がれてゆくに違いない。


Musée Yves Saint Laurent Paris / イヴ・サンローラン美術館
5 avenue Marceau 75116
01 44 31 64 00
Alma Marceau 9番線
火〜日 11:00〜18:00(金〜21:00)
月、1/1、5/1、12/25
10€、10〜18歳 7€、9歳以下無料

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