今シーズン様々なブランドで過去のデザインを複製したアーカイブ版の発表が目立った。そこにはブランドの本質を今の若者に伝えていく意義と販売戦略上の意図があったのだ。

過去のデザインの復刻版が目立つ

今シーズン、様々な有名ブランドの『復刻版』がよくにみられる。

例えば、ニューヨークの新鋭デザイナー、シャイン・オリヴァー氏はヘルムート・ラング氏とコラボを発表し、同ブランドの新しい企画として『エディター・イン・レジデンス』を発表。イギリス『デイズド』誌編集長のイザベラ・バーリー氏を迎えた。

このコラボコレクションで発表されたのは、ヘルムート・ラング氏の復刻版である15のアーカイブアイテムを展開するというものだった。

またミラノではドナテッラ・ヴェルサーチ氏が兄ジャンニ・ヴェルサーチ氏の名前をショーに使い、彼が90年代初頭にデザインしたクチュールのレプリカ版を発表した時、インスタグラムなど大きく注目された。

その後パリの『ケンゾー』では、デザイナーのキャロル・リムとウンベルト・レオンが「ラ・コレクション・モメント」で創業者高田賢三氏が70年代初頭パリでレディメイドの服を革命的に広めた時のアーカイブ版を発表した。

販売戦略での利点も

こうしたブランドの過去のアーカイブ版を発表することには批判の声もあるが、販売戦略上の利点もある。

まず、復刻版は新しい世代にブランドのオリジナルな本質を伝えていくのに力強いパワーを発揮する。

次に過去の「ヒット商品」の力を持って、シーズンを問わず長期間販売できる商品を確実に売り出すことができ、商業的に利益を見込める。

最後に、デザイナーによってもブランドの過去のデザインに敬意を示すことで自由に誰からも咎められずにコレクション展開をできる。

ブランドが本物であることが重要になってきている現代で、かつスピーディーに新しいものを要求するインスタ世代にとっても、ブランドのオリジナルな本質とその新しさ両方を伝えていく手段になっているのだ。

ファッション工科大学美術館ディレクターのバレリー・スティール氏は「多くの人々は過去の歴史のことをあまり知らないけれど、イメージは持っている」と言う。

彼女は現代の消費者は「視覚的に教養がある」と考えている。

ヘルムート・ラング氏は2005年に同ブランドを去った後、オリジナルデザインを寄贈したり、破棄したりしていたため、その所有権については色々議論もあり、オリジナルなデザインの財産を用いて新しいものを作ることにも話し合いがなされていると言う。

今は伝統的なデザイナーのデザインをアーカイブとして再発見していく時代の流れがある。

シーズンレスな服を求める消費者

多くの20世紀初頭の老舗ブランドがある一方で、30、40年の歴史のブランドのアーカイブアイテムは時代にとらわれずモダンな印象がある。

例えば、ジーンズやスポーツウエアは60、70年代からのブランドものでも、今の時代にしっくりくるものだ。

ケンゾーのデザイナーレオンとリンによると「ブランドの歴史を忘れる人が多い中、自分の色をつけるのではなく、ブランドの財産を今の時代でも構築していきたい。ノスタルジックなレベルというよりは、若い世代へ(財産)を知らしめていきたい」と言う。

こうした各ブランドの戦略は、商業的メリットの他にシーズンもの以外に典型商品も揃えることで、長く安定してかつ良い収益率で商品を販売することができ、消費者の自分のスタイルにあったベーシックを長く着たいと言う気持ちにもあうのだ。

フューチャー・ラバラトリー社の調査によると、65%の高級志向消費者はシーズンレスな通年仕様のスタイルを好むとの結果を得た。

最も大成功したアディダス

復刻版モデルが最も成功したブランドはアディダスと言える。

スタンスミス、スーパースター、ガゼルなどのスニーカーモデルが復活するとうなぎのぼりに売れていき、特にスタンスミスは1971に初登場したが2015年に再販売すると当初3万足の販売予測を上回り、100万足の販売に成功した。

http://shop.adidas.jp/originals/stansmith/

アディダスシューズの売上げは2015年800万足に上り詰め、過去40年のセールスは5千万を超えている。

こうした復刻版の成功の理由には、若い世代が過去のオリジナルを知らないからだと言える。

20歳の若者にとっては、ヘルムート・ラング、ケンゾー、スタンスミスは全く新しいものに映るのだろう。