日本を代表するアーテイスト、草間彌生のインスタレーション『Infinity Mirrors(無限の鏡部屋)』は、無数のLEDライトが織りなすフォトジェニックな作風が世界中で話題となり、かつてないほどインスタグラムをにぎわせている。

神秘的なハイパーリアリズムを描いた本作の爆発的な人気はまさに、ライトとミラーの秘めた力を証明している。

光と鏡の適切な組み合わせは、ラグジュアリーリテールにおいても魅力的な店舗づくりと、売り上げの向上を図るうえで欠かせない要素だ。

「照明はストアデザインの5割を決める」と語るのは、Joseph(ジョセフ)やMarni(マルニ)などの店舗デザインを手掛けるデザイナーデュオSybarite(シバライト)のひとり、建築家のSimon Mitchell(サイモン・ミッチェル)。

店中を照らす明るい照明や、カジノの様に眩しいアクセントライトが商品を照らし、自然光を遮るようにデザインされた昔ながらの手法には、ソーシャルメディア映えする空間を生み出すための新たなヒントがあるという。

「我々はショッピングを通して、消費者の記憶に残る瞬間を提供しなければならならず、共有型のコンテンツづくりには効果的な照明が必要不可欠です」と、ミッチェル氏は話す。

出典:【Sybarite】- Marni Womenswear Store Sloane Street London United Kingdom, Photography by Richard Davies

リテールイノベーションを手がける会社、The Science Project(サイエンスプロジェクト)の代表を務めるJeremy Bergstein(ジェレミー・バーグステイン)は、

「以前は店外でしかあり得なかった様々なアクションが、今は店内で見られるようになりました。大切なのは、光の具合をよく考えることです」と、店舗のありかたが時代とともに変化していることに言及した。

なかでもフィッティングルームは、直接売り上げを作用する最も重要な照明だ。試着室でのセルフィが一般化したことにより、今や写真映えの良い光は必須となった。

ここで注目したいのがLEDライトによって、白熱電球の様に暑過ぎず、適切な明るさの個室空間をつくる方法だ。

「従来のフィッティングルームは、試着している消費者の目に美しく映るよう工夫されてきました。そのため以前は蛍光灯を使用していましたが、蛍光灯のミラー越しにセルフィを撮ろうとすると、イメージ上にフレアが発生します。 しかし、LEDライトを使うと、 照明と肌の色合いの同じスナップショットが撮影できます。加えて、寒色照明と暖色照明の組み合わせは、顔の色つやと血色を良くみせる完璧な方法だ」と、ミッチェル氏は話す。

また、東京をベースに、ユニクロやLouis Vuiton(ルイヴィトン)の店舗デザインを手がける、建築家のGwenael Nicolas(グエナエル・ニコラス)によると、いくつものライトが光芒の様に顧客の体を映し出す照明が最も効果的だと話す。

「天井に間接照明を設置し、壁がその光で包まれるようにします。そして、顔や体の上部にハイライトが当たるよう、最適な場所に直接照明を置くと、混ざりあった2種類の光が美しい空間を生み出します。」

出典:【CURIOSITY】 – Dolce & Gabbana Aoyama

一方で、自然の光を利用した店舗づくりも増えている。英国の百貨店Selfridges(セルフリッジ)では、昨年はじめて4階のウィメンズウェアのギャラリーに大きな窓を設け、開放的な空間をつくりあげた。

「従来のデザインスタイルの構成には電気照明のみ採用されてきましたが、もしかすると大きなウィンドウから自然の光を採光するという現在の傾向は、以前から既に生まれていたものかもしれません」と話すのは、Paul Smith(ポール・スミス)やAcne Studios(アクネストゥディオズ)の店舗デザインを手がける、建築家のSophie Hicks(ソフィー・ヒックス)。

同時に彼女は、偏った照明ではなく、自然照明と人工照明のバランスが極めて重要だと強調した。

ヒックス氏が手がけたソウルのAcne Studiosの店舗では、スポットライトを一つも使わなかった。四方からの自然光と、屋根から入る日差しが天然の照明になる。

天井は、光を屈折させる蛍光灯で覆われているため、夜間の店内の明るさは完全に均一に保たれる仕組みだ。

彼女はスポットライトを追加することも試みたが、過剰な演出となったためすぐに取り外された。

出典:【SOPHIE HICKS ARCHITECTS】 – Upper floor. Sophie Hicks – Acne Studios – Photograph by: Annabel Elston