セックスアピールは現代では通用しない。

香水の匂いが充満した店内に露出度の高い服装をしたショップスタッフが印象的なAbercrombie & Fitch(アバクロンビー&フィッチ)は、2000年代のファッションを席巻していたが、現在はミレニアル世代の嗜好とEコマースブームによって苦境に追い込まれている。

アバクロの直近の四半期の損失は1550万ドル(約17億円)に及び、さらに今年に入り50店舗の閉店に見舞われている。

さらに今年行われたアンケートでアバクロは13歳から34歳の年齢グループに最も嫌われているブランドだという結果が出ている。

古き良き時代精神を取り戻すべく、アバクロは10年以上ぶりにテレビCMを製作した。

カジュアルアウトドア系ファッションブランドとしてのアバクロ125年の歴史を再現するべく、1分間のCMでは冬の都会で洋服を着込んだ20代の若者達がはしゃいだ様子が映され、さらにミレニアル世代に対して、勇敢になり、若いうちに試行錯誤を繰り返そうという応援のメッセージが送られている。

大人になることへの悩みに焦点を当てたCMを作ることで、アバクロはティーン向けの洋服ブランドというイメージを避けているようだ。

さらに、若い世代は女性がメディア性的対象として描かれることに敏感になっており、ハーヴェイ・ワインスタイン氏の一連のセクハラ問題の後では特に、「性」と結びついたブランドイメージを払拭することも重要だろう。

実際、アバクロは非常に保守的な文化を持つサウジアラビアへ参入しようとしていることを最近明かしていた。

「顧客がいつ、どこでどのように我々と関わり、ブランドとして我々にどのようなことを要求しているのか分かっているつもりです」とアバクロのチーフマーケティングオフィサーは語り、さらにCMでは「顧客の皆さんが重要な旅の途中であるように、ブランドとして我々は重要な旅の途中にあるのです」という意図があると続けた。

しかし、アバクロのセックスアピールの強いブランドアイデンティティーが問題視されていたとはいえ、新しいキャンペーンは普通すぎるところに落ち着いてしまった感も否めない。

「今回のCMで、アバクロは現代若者文化の表象を全て取り込んでしまいました。多国籍、多文化のバックグラウンドを持つキャスト、パソコンに取り憑かれたスタートアップ企業家、流行のレストランや手を上げて踊る20代の美しい若者たちなどです」と、とあるマーケティング専門家は分析する。

「ですがそれは全て表面上のもので、中身はありません。まるでアバクロが描く理想のミレニアル世代像を鏡に映したかのような映像です。ブランドはそこに何も付け加えていないのです」

「American Eagle(アメリカンイーグル)、Forever 21(フォーエバー21)、H&M(エイチ&エム)、Levi’s(リーバイス)などの大衆系ブランドならどこでも作れそうなCMになっています」

ブランドのルーツに重きをおくことが悪いというわけではない。

Burberry(バーバリー)やKent & Curwen(ケント&カーウェン)などのイギリス発のブランドは、100年ほど続くブランドのカルチャーを焼き直すことで若いファン層を獲得している。

「アバクロは正当なDNAを持っています。それを現代に適応させ、ブランドのバックグラウンドを語る必要がありますが、アバクロは現在の顧客や顧客となるポテンシャルのある層にそうした情報を提供していません。過去をたどり、前進するためにも必要な行動でしょう」と前述の専門家は分析する。