独自のコンセプトを武器に荒波のファッション業界に挑む、注目株のデザイナーのリアルな声をきく連載企画【新進デザイナー】。第9回目は、2015年LVMHグランプリを獲得した、Marques’ Almeida(マルケス・アルメイダ)。

ビジネスとプライベートを共有する夫婦のデザイナーデュオ、Marta Marques(マルタ・マルケス)とPaulo Almeida(ポーロ・アルメイダ)が手がけるMarques’ Almeida は2011年秋冬にコレクションデビュー。当時はCentral Saint Martins(セントラル・セント・マーチンズ)を卒業したばかりで、恋人同士だった二人は、同棲中のロンドンのワンルームの狭いマンションの一室で、二人で手作業でデザインから製作まで行ったところからスタートした。

ルックブックやプレゼンテーションで起用するモデルは、友人など一般女性ばかりで、その独自の世界観がロンドンで一気に注目を浴び、今では『MAガールズ』と称されるようになった。ともにポルトガル出身の二人は2年前に籍を入れ、昨年長女を出産。二人の出会いから現在に至るまでのプライベートな側面も含め、ブランドとしての成長や製作過程など、今後のロンドンのモードを担うであろう二人に疑問を投げかけた。

Q:Marques’ Almeidaというブランドを紐解くためには、二人の関係性に迫る必要があると思うのです。まずは出会いを教えてくれますか?

Paulo:僕らはポルトガルの都市ポルトのファッション専門学校で出会いました。全てがとても自然な流れのように、なんとなく話すようになり、意気投合し、二人で過ごす時間が多くなり、人生のことや創作作業についてなどたくさん共有するようになっていきました。

Marta:今は夫婦であり、友人であり、ビジネスパートナーです。

Q:ポルトガルで学校を卒業後、二人でCentral Saint Martinsへ入学していますが、二人でロンドンへ来るのは大きな決断だったのでは?それとも、もともと計画していたこと?

Paulo:計画していたわけではないけれど、それも自然な流れだったんです(笑)。世界に通用するような一流のブランドでインターンをしたいと二人とも思っていたし、まだまだ学校で学ぶべきこともたくさんあると考えていました。ポルトガルはファッション産業も市場も小さいし、生産などを考慮しても、イギリスに行くべきなのは明らかだったんです。

Q:Central Saint Martins卒業後すぐにブランドを立ち上げていますが、それも自然な流れだった?

Paulo:そうですね。ポルトガルにいた頃から二人でブランドをやりたいと思っていたし、二人でやることで互いを補完しながら高め合い、今までにないブランドを作れると思っていました。ただ、タイミングを待っていて、今だ!っていう時が来たという感じ。

Marta:学生時代に私はVivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)で、彼はPreen(プリーン)でインターンを経験しました。別々のところで学んだことも共有し、二人の糧にしていきました。彼も言った通り、二人で作品を創作するタイミングだけが必要で、ファーストコレクションの前に卒業コレクションを二人で手がけました。別々に創作する理由が見当たらないほど、本当に自然なことだったんですよ。

Q:Marques’ Almeidaのコンセプトや女性像を教えてください。

Paulo:エフォートレスで、未熟な側面を持ち、静かに反抗的な女性のための服です。

Q:最近ではモデルではなく一般女性を起用するブランドも増えてきましたが、Marques’ Almeidaのコレクションデビューの当時は全然主流ではなく意外性に長け、とても話題になりました。なぜそのような手法をとったのですか?

Marta:今現在もそうですが、私たちの周りにいる友人が最も影響を与えてくれる存在なんです。街で見かけた人、スタイリスト、ジャーナリスト、ショップ店員、時にはインスタグラムで見つけた、見ず知らずの女性。一人一人が持つスタイルやパーソナリティ、全てが私たちの着想源となり、コレクションを創造するのに重要な枠割を持っていて、そのリアルな空気感を表現するために、彼女たちをモデルとして起用するのも自然なことでした。

Paulo:毎シーズンのコレクションイメージも、彼女たちからインスピレーションを得るし、僕らの服を着て彼女たちがどう感じるかもとても大切にしています。なので、フィッティングの時にサンプルをたくさん着てもらって正直な意見をもらい、反映させるようにしています。2014FWでは、初めてイヴニングドレスの製作をしようと思いました。それは今までのコレクションとは系統が違うけれど、MAガールズたちならどんなイヴニングドレスを着るだろうとイマジネーションを膨らませることから始まったんです。

Q:“リアル”を追求して製作しているから、時代の空気とマッチするということですね。LVMHのグランプリ受賞でも、シグネチャーであるデニムは高く評価されていました。デニムを使うようになったきっかけを教えてくれますか?

Paulo:正直、僕たちにとってデニムを使ったアイテムはコレクションの一部にしか過ぎなくて、“デニムブランド”みたいに形容される時ってどこか違和感を覚えるんですよね。ファーストコレクションからそうだけど、僕らがティーンエイジャーだった90年代のモードに本能的に強く惹かれて、ヴィンテージのI-DThe Faceを見てインスピレーションを得てきました。

そのためか自然とデニムが多かったとは思うんだけど、意図的にそれを打ち出していこうとしたわけじゃないんです。もちろん、多くの人に僕らのデニムが愛されるのは嬉しいことですが。

Marta:マーケットを意識してなく、ブランドのアイデンティティを語るためにデニムは必要だと思っているの。


Q:デニムへのこだわりは?

Marta:100%コットンのインディゴデニムです。デニムはフィット感やダメージや色合いやフレアなど、さまざまな表情を作れる点が面白い。毎シーズン新しいファブリックに挑戦するけれど、デニムもブランドのキーアイテムとして継続するつもりですよ。

Q:ブランドの方向性とか製作過程で二人がぶつかることはないんですか?

Paulo:頻繁にあります!スタジオで、チーム皆がいても大きな喧嘩をすることだってあくらい。Marta:昔は自宅兼スタジオ、しかもベッドルームも一つだったから、大変だったよね(笑)。

Q:大きな喧嘩の後も同じ家に帰るわけですよね。どうやって気持ちを切り替えいるんですか?ルールを設けたりしているのですか?

Paulo:大抵は、冷静になって自分がすべきことに集中すればそのうち喧嘩の内容も忘れてしまい、何事もなかったかのように戻る。そしてまた思い出す(笑)、そんな繰り返しですね。

Marta:「ちょっと待って!家ではしないって言ったのに、また私たち仕事の話をしてしまってるわ」っていつも言ってます。時には、裾の長さについて1時間以上、感情的に論争することだってあります。全ては私たちが信じることのためで、製作過程はそれだけ重要だから、意味のあることだと思ってるので。今は子育てもあるし、自然と気持ちを切り替えられるようになりましたけどね。

Q:その製作過程について少し教えてください。どのようにコレクションテーマを決め、展開させていくのですか?

Paulo:毎シーズン、何か新しいことに挑戦することです。新しいファブリック、アイテム、パターン、シルエットなど。常に“慣れて”しまわないように、フレッシュでエキサティングな要素を取り込むようにしています。アイデアの源は常に、僕らの周りにいる女性や、Marques’ Almeidaを自分なりに着用してくれる人々です。

Marta:インスタグラムでMarques’ Almeidaを着てくれてる人を見たり、街中で見かけたり、セレブリティが着てくれたり、全てがアイデアの源となります。彼女たちが常に挑戦心を失わないように、私たちも毎シーズンその姿勢を崩すことはありません。彼女たちのワードローブにしっかりハマるもの、尚且つ奇妙や不細工のギリギリのラインをいく、クレイジーなミックス感を持たせるようにしています。

Q:日本でも取り扱い店舗が増えていて、ファンもついてきています。訪日の予定はありますか?

Paulo:実は一昨年前、二人で日本へ行く予定を立てていたんです。彼女の妊娠が発覚して、キャンセルしてしまったけど、日本の伝統も文化もとても刺激的に映るし、とても行ってみたいですね。娘がもう少し大きくなったら、再チャレンジするつもりです。

Q:最後に、今後のブランドの展望を聞かせてください。

Paulo:計画とか展望とか、正直ないんですよね。とにかくチームとしてバランスが良く、ブランドを成長させていくことが目的だけど、着実にステップを踏んでいきたいと思ってます。LVMHのグランプリで受賞した賞金のおかげでチームを増員することができ、僕らはデザインに集中できるようになっり、セールスのチームもしっかり固めることができたおかげで、お客さんのケアや声を汲み取れるようになったと思います。けれど、全てのことに対して常に挑戦だと感じるし、ゴールはなんてないんじゃないかな。メゾンではない僕らのような小さなブランドは、安定することなんてないので、常に目の前のことに集中して、僕らにしか作れないものを生み出していきたいっていうのがずっと変わらない展望です。