3月27日から4月3日まで、一週間の日程で中国・上海で開催されていた上海ファッション・ウィークが終了を迎えた。

2003年から毎年開催されている上海ファッション・ウィークでは、同イベント最大規模の見本市である「モード上海」をはじめとする3つの見本市に200社以上が出展。

今回は中国全土から約5万人もの業界関係者が訪れたと共に、日本からも前回を大幅に上回る数となる約100ものブランドが参加。イベントは大盛況のうちに終わった。

近年影響力を増しつつある上海ファッション・ウィーク

一方、日本からの参加ブランドが年々数を増やしていることからも窺えるよう、近年上海ファッション・ウィークは世界においてもその存在感を増しつつある。

中国の国営通信社である新華社通信の子会社「China Economic Information Service(チャイナ・エコノミック・インフォメーション・サービス)」は、同社の指標において、近年の上海ファッション・ウィークは世界に数多く存在するファッション・ウィークの中でも、トップ10に数えることのできるものであると誇る。

この根拠として、同社の指標では世界における10のファッション・ウィークをソーシャルメディア上への露出の多さや消費に与える影響力などの観点から総合的に評価。

さらに中国のファッション産業における上海ファッション・ウィークの影響力の急速な拡大も、評価されるべきものであるとしている。

もちろんこれを伝えているのが中国の国営会社であるということを考慮すると、同時にパリ・ファッション・ウィークやロンドン・ファッション・ウィーク、ミラノ・ファッション・ウィーク、ニューヨーク・ファッション・ウィークといった欧米のファッション・ウィークと比較すると、上海ファッション・ウィークの持てる影響力はまだまだ限られたものであることが言える。

上海ファッション・ウィークは中国におけるファッション消費増加にも貢献

しかし上海ファッション・ウィークが存在感を増しており、中国のファッション業界の潮流を読み解くのに欠かせないものとなっていることは紛れもない事実でもある。

2003年に始まり今年で16年目を迎えた上海ファッション・ウィークは、チャイナ・エコノミック・インフォメーション・サービスによると、上記した指標により、今や欧米のファッション・ウィークに次いで世界でも6番目の地位に着けるという。さらに同社の統計によると、中国のファッション消費は2015年には3兆2000億元(約54兆2700億円)であったのに対し、2017年には4兆3000億元(約72兆9200億円)に。全体で7.5%にも上る増加となっており、チャイナ・エコノミック・インフォメーション・サービスはこの急成長に上海ファッション・ウィークが大きく貢献しているとする。

中国のアパレル市場は2019年に世界一に

一方、中国のファッション産業の急速な増加を示す指標はチャイナ・エコノミック・インフォメーション・サービスによるもの以外にも存在する。

市場調査会社Euromonitor International(ユーロモニター・インターナショナル)の予測では、2019年に中国の年間におけるアパレル・セールスは2014年から比較してなんと25%も増加。2014年比較でわずか3%の増加となる米国を抜き、世界一となることが伝えられている。

さらに世界におけるアパレルの市場規模も、2014年には20%の米国をわずかに上回る21%であったのに対し、2019年には24%に。2019年に19%となることが予測される米国を大きく引き離すことが予想されている。このようなことを鑑みても、上海ファッション・ウィーク同様に中国のファッション産業は今後より無視できないものとなっていくことがおわかりだろう。

中国ではローカル・ブランドが強さ誇る

しかしこのように存在感を増している上海ファッション・ウィークから垣間見えるのは、中国アパレル市場の急速なまでの成長のみではない。

ユーロモニター・インターナショナルの統計によると、2014年における米国のアパレル市場では2.3%のマーケットシェアを獲得するNike(ナイキ)を筆頭に、同2.1%のOld Navy(オールド・ネイビー)や1.8%のRalph Lauren(ラルフ・ローレン)など、世界展開するインターナショナル・ブランドの多くがマーケットシェア1%以上を獲得している。

それに対し、2014年の中国において、マーケットシェア1%以上を獲得しているインターナショナル・ブランドは存在していない。さらに唯一マーケットシェア1%以上を獲得しているブランドであるHeilan Home(ハイラン・ホーム)は中国ローカルのブランド。それ以外でも中国国内で比較的大きなマーケットシェアを獲得しているブランドのトップ20においては、その半数以上の11ブランドもが中国ローカルのブランドとなっている。

2014年における米国と中国の人口を比較すると、米国が3億1000万人ほどであるのに対し中国は13億9000万人となっており、母数が多いことを加味するとインターナショナル・ブランドがマーケットシェアを獲得しにくいことは頷ける。しかしそれを勘案しても中国におけるローカル・ブランドは、他の国におけるローカル・ブランドよりも強い存在感を放っていることは間違いないだろう。

尚、データが2014年と少々古いものとなっているのはご容赦願いたいところであるが、この状況には近年少々変化も生まれているようだ。

アジアにおける小売業界のニュースを伝える企業Inside Retail Asia(インサイド・リテイル・アジア)によると、中国アパレル業界においては2016年、ローカル・ブランドのシェアが59%に。2011年において中国ローカル・ブランドのシェアが64%であったのと比較すると、近年においては中国でもインターナショナル・ブランドがシェアを獲得してきていることがおわかりだろう。

さらに中国においてマーケットシェア1%以上を獲得するアパレルブランドが極めてまれであることについてもう一つ付け加えるとすると、中国においてはより多くのブランドに人々の関心が分散されているということも言えるのではないだろうか。

中国市場への進出を考えるのであれば、このような中国ならではの事情は考慮されるべきであろう。

十人十色のファッションは上海ファッション・ウィークでも

このような中国のアパレル市場における特徴は上海ファッション・ウィークにおいても現れていると言えるだろう。

日本人のファッションは比較的流行に左右されやすいと言えるが、一方中国の若者のファッションは十人十色で個性的なものも多い。上海ファッション・ウィークにおいても、例年個性的な服装に身を包んだ多くの人々の姿が目撃されている。

ちなみに中国といえばかつてからデザインに赤を多用してきたが、上海ファッション・ウィークでも例年スタイルのどこかに赤を取り入れる人は非常に多くみられるとのことだ。

中国らしさが現れるようになったのは比較的近年のこと

しかし中国市場や上海ファッション・ウィークにおいて、ローカルのブランドが支持を集めてきたのは比較的近年のことでもある。

初期の上海ファッション・ウィークは、中国ローカルのブランドが数多く出展し中国らしさが現れる現在のものとは異なり、フランスやイタリアなど欧米のブランドが主要なパートを占めていたという。それが今では海外のバイヤーに向けて中国発のブランドがアピールする場となっているのだから、中国のファッション産業の成長は目覚ましい。

さらに近年の上海ファッション・ウィークでは東華大学をはじめとする、中国でファッションやデザインの専門大学として名を馳せる名門校に所属する学生が手掛けた作品をも展示。次世代のデザイナーの養成にも力を注いでいるようだ。

今後の上海ファッション・ウィークはどのような方向へ?

しかし欧米のブランドが主要なパートを占めるところから始まり、自国のデザイナー・ブランドを売り出すまでに至った上海ファッション・ウィーク、そして中国のファッション産業はどのような方向に向かっていくのだろうか。

今後それらが向かう方向として考えられるのは、さらなる成熟化と品質の向上であると考えられる。

中国といえば近年まで日本国内で爆買いを行ってきたことでもお馴染み。爆買いと聞くととかくその買い物の量に目が行きがちである一方、この真の動機は高品質なものを手にしたいという願望であるとの指摘はこれまでにも行われてきた。

とあるインタビューにおいて中国の消費者がローカル・ブランドの商品を購入する理由として、価格の安さを挙げていた。近年インターナショナル・ブランドが中国においても強さを増してきているのは、中国における中産階級が以前よりも増加し、価格の安さ重視でブランドを選択しなくなりつつあることの裏返しであるように思えるが、そんな中国のアパレル業界と市民の変化は、上海・ファッション・ウィークからも垣間見えるのではないだろうか。

急速に変化を遂げる中国のファッション産業と上海ファッション・ウィーク。その行方を今後も見守っていきたい。

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