誰もがクリエイターになれる新ビジネスモデル。共創ファッションブランドAWAYTOMARSのファウンダーに独占インタビュー

新たなビジネスモデルを築いている、ロンドン発ブランドAWAYTOMARS(アウェイトマーズ)をご存知だろうか?

いわゆるコレクションブランドやデザイナーズブランドとは違い、AWAYTOMARSは新鮮なアイデアやインスピレーションを重視した共創ファッションブランド。クラウドソーシングのイニシアチブとして年齢、人種、性別、国籍にかかわらず、クリエイティブな人々とのコラボレーションを目的としている。

参加は簡単で、公式ウェブサイトにて登録を行い、自身が描いたオリジナルのスケッチ画を主とするアイデアソースを掲載する。それらは誰でも閲覧することができ、彼らのアイデアに賛同した者が、さらにアイデアを出し合い創作を行い、クラウドファンディングによってコレクションを完成させられれば、AWAYTOMARSの製造会社が生産を行うという仕組みだ。

2017年10月のリスボンファッションウィークでは、85カ国からの718人のデザイナーとの印象的なコラボレーションで生まれた、AWAYTOMARSの折衷的なSS18コレクションを発表した。

そんな、AWRETOMARSを立ち上げたのは、ポルトガル出身のAlfredo Orobio(アルフレッド・オロビオ)に今回インタビューをした。

「日本のクリエイターの参加も楽しみにしているよ」と笑顔で迎えてくれた彼に、AWAYTOMARSが生まれたきっかけや、作業プロセスでの課題や利益、将来のファッション業界についての彼の見解を訊いた。

Q:AWAYTOMARSの作業プロセスや、クリエイティブコラボレーションのアイデアはどのように生まれたのですか?

AWAYTOMARSは大学の卒業作品のために勉強していたときに生まれました。FacebookとInstagramの背後にある情報を、人々が共有する方法をマッピングすることに興味があったんです。長い時間をかけて研究し思考を巡らし、「人々が一緒に作ったり協力し合うことができるオンラインファッションプラットフォームがあれば」と思いつきました。

世界の状況が変化する中、ファッション業界はルールや限界に縛られていませんよね。そんなファッションの世界で新しいエキサイティングな何かを生み出せると確信し、AWAYTOMARSを立ち上げました。

Q:共同となると、創作の過程には葛藤や困惑もあると思いますが、どのように管理しているのですか?

創造的な混乱を歓迎しています(笑)。良いものを生み出したいという欲求に駆られているのであれば。何かを一緒に作業してくれる優秀なクリエイターを探しているときは、緊張と人格の衝突が避けられません。

もちろん、基本的なプラットフォームのルールと制限がありますが、可能な限りオープンで透明なものにするよう努めています。著作権で保護された個人のインプットを公開する場ではなく、集合的な作業を目的とする場なので、私たちのシステムはその共創のプロセスを扱い、公開できるよう設計されています。

Q:ファッションコラボレーションのブランドと既存のブランドで、大きく違う点は何ですか?

例えばKarl Lagerfeld(カール・ラガーフェルド)のコレクションをキャットウォークで見ても、そこに60万の人々が過程に関わっているとは言いません。これは、一人の名前を出し、一人が脚光を浴びるシステムだからです。AWAYTOMARSのアイデアは正反対で、コラボレーションと共同制作に関係するすべての人が信用を得られるように、公平でオープンなクレジットシステムを採用しています。

Q:あなたのルーツであるポルトガルは、創造的な仕事に影響を及ぼしていると思いますか?

AWAYTOMARSはポルトガルの会社で、ロンドンに事務所を構えています。チームの半分は英語で、残りの半分はポルトガル語です。リオビーチのように誰もが陽気でオープンで、その雰囲気とDNAは、柔軟な頭を養うのに大きく影響していますね。

オープンでいることは、ファッション業界で生きる上で重要だと思うので。

Q:ファッションの道に進みたいと思ったのはいつ頃からですか?

祖母は仕立て屋で、私は学校の後で祖母と一緒に午後を過ごて育ち、常にファッションに情熱を持っていました。祖父母の家具会社で働いたこともあるのですが、15歳の時、私たちのような若者のためのファッションレーベルを作るという考えの元、動いたことがあったんです。ほぼ1年間、ブランドのために、市場調査、小売店の訪問、ファッションスクールへ通いつめましたが、結果的には、残念ながら、両親のサポートだけでプロジェクトを完了させることはできませんでした。

その後、経済学と国際関係を学ぶために大学に行きましたが、休憩ごとに芸術やファッション関連の工房や作業場へ行って参加し、すばらしいエネルギーを得ました。やがて工房での仕事に参加することがメインになり、卒業までの最後2年間は夜間学校に行くようになりました。 午前5時に起きて、午前2時に寝るといった生活。2つを経験した素晴らしい狂った年でしたね(笑)

Q:卒業後はどのような道を歩んできたのですか?

10年間、ラテンアメリカの高級ブランドのブランディングコンサルタントの職に就きました。私がそこにいる間、ソーシャルメディアと人々がオンラインでアイデアや情報を有意義に共有する方法を専門としたのですが、それこそ私の修士号の研究テーマでした。ビジネスパートナー、Carlo Valentino(カーロ・バレンティノ)の助けを借りて、どのように情報を共有することが最善かを探り、フィードバックの方法を改善し、共有場で生産し販売できるオンラインツールを構築しました。AWAYTOMARSは市場のためのより良い、革新的なアイデアを確実にするという目的で生まれたのです。

Q:AWAYTOMARSという名前はどのように生まれたのですか?

コンセプトとビジネスモデルを構築し始めたとき、私たちは何をしたいのかを明確にする必要がありました。AWAYTOMARSで行うことはすべて新しいものであり、非常に破壊的ですが、市場のためのより良い、革新的なアイデアを確実にするという目的で生まれました。

火星は遠い目標であっても、ファッション業界の新しい方向性であり続けるという意味を込めてAWAY TO MARS(火星の方へ)と付けました。

Q:AWAYTOMARSは、ファッションの経験がない人も含め、あらゆる種類の人々のアイデアを提供しています。 この戦略が創造的なプロセスにもたらした課題は何ですか?

人々の中には多くの偉大で革新的なアイデアがあり、自由にアクセスできる場を作れたことを誇りに思っています。我々は異なる人、異なる文化、背景、経験レベルを扱っているので、その点において課題は山積みです。大なり小なり、一つの作品を作る過程においてそれぞれの課題が見つかるので、一言で言い切ることはできませんが。

Q:では逆に、最もポジティブな結果は何だと感じていますか?

異なる人種、背景と人生経験を組み合わせると、エキサイティングな結果を生むということを示せたことですね。ファッション業界だけでなく、革新を模索するあらゆる種類の業界にとって、共創は多くのポジティブな結果をもたらすと信じています。

これはFacebookやInstagram、スマートフォンが存在しない10年前には不可能だったこと。現代は、互いに協力する準備と挑戦する心さえあれば、無限のアイデアを引き出すことができるのです。“挑戦”は最も難しい問題かもしれませんね。

Q:アイデアを持ち寄りコレクションが完成したとしても、実際生産に移るというステップはリスクでもあり、それこそ“挑戦”なのではないでしょうか。

製造業者と私たちは非常に近い関係です。工場が私たちの生産基準と個人的な取り扱い基準に達することを確認し、同意できれば生産を行います。現時点では、ポルトガル、イタリア、イギリスで服を生産していますが、スレッドメーカーからデリバリー会社まで、私たちに協力してくれるすべての業者と、同じ価値観を共有しています。

Q:プロジェクトに参加するデザイナー・クリエイターには、どのようなスキルが必要ですか?

革新的なアイデアだけを求めています。描画スキルや技術的知識は重要ではありません。

Q:AWAYTOMARSが行っている、共同創造とクラウドファンディングがファッションの未来だと思いますか?

ファッション業界は過去50年間、創造に革新をもたらすことに集中してきましたが、ビジネスモデルでは停滞しています。他の産業と比較すると、産業革命以来、真の産業革新を経験したと言えるのはないでしょうか。Zaraモデルは革命だと言う人もいますが、Zaraがチェーンのスピードを上げていたのは、非持続可能で倫理的ではないモデルだったためです。ファッション業界は、自動車、輸送、通信などの他の産業に比べるとまだまだ非常に小さい成長しかなく、技術の進歩を経験していないということです。

今ようやく、業界が新しい何かを経験する時だと思っています。トラックを維持するのが難しいほどたくさんのブランドが混在していますが、それでも尚人々は新しい物語、新しい情熱、そして独占的なアイテムを求めている。共同創造は、日々創造的なプロセスに新しい人と新しい物語をもたらします。そういう意味ではAWAYTOMARSが将来の指針になると信じていますね。

Q:現在販売は自社オンラインショップのみですか?今後の販路や展開について教えてください。

ストックを作るつもりはないので、今後も卸はしない。Melissa(メリッサ)とのコラボレーションで生まれたシューズが、Melissaの店舗やオンラインで購入できるように、他企業やブランドとのプロジェクトについてはその都度、相手に合わせた販路を考えるつもりです。

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