Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)のメンズ・プレタポルテのクリエイティブ・ディレクターに就任した、Off White(オフ・ホワイト)クリエイティブディレクターVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)。

彼は、業界を超えて多くの企業とのコラボレーションや、世界各国で開催されるインスタレーションなど、今最も輝きを放つ目を離せないクリエイターである。そんなヴァージルを瞬時に魅了した新世代のファッションデザイナーが、ロンドンにいる。

A-COLD-WALL*(ア・コールド・ウォール)のファウンダーで、弱冠27歳のSamuel Ross(サミュエル・ロス)。

イギリスの労働者階級出身だというサミュエルは、ファッションを専門的に学んだことはなく、広告業界でグラフィックアートを制作して生活をしていた。そんな当時の彼の創作意欲は実験映画からストリートアート、旧友と始めた2wnt4というストリートウエアレーベルまで多岐に及んだ。

そんな自身の可能性を探求していた中、サミュエルは2013年にヴァージルの作品を目にし、虜になったという。インスタグラムでフォローしたらすぐにヴァージルからフォローバックされ、DMが届いた。その後はOff Whiteのクリエイティブ・コンサルタントとして、様々な作品に携わり、その経験をもとに自身のブランドA-COLD-WALL*の立ち上げに至った。

ともに歩み、間近で見てきたサミュエルが知る、時の人ヴァージルの魅力とは一体何か。今回はサミュエルにヴァージルとの馴れ初めやOff Whiteでの経験、自身のブランドについて語ってもらった。

Q:インスタグラムで繋がるというのは何とも現代的なストーリーですね。実際、DMではどのようなやり取りが行われたのですか?

当時の仕事はグラフィックデザインだったけれど、個人の創作活動としてイラストレーションからグラフィックデザイン、そしてフィルムやプロダクトデザインといった複数のメディアでの表現を試みており、それぞれの媒体からその時代性を無意識に感じさせるものづくりをしていました。

インスタグラムでそれらの作品を投稿していたら、それらを見たヴァージルが、僕のマルチファクターな言語として捉えられる表現方法を評価し連絡をくれました。ヴァージルはがOff Whiteの展望や時代性について考えを共有してくれ、もともと彼の作品に惹かれていたし、こんな素晴らしい機会はないと思ってすぐにヴァージルの下で働くことにしました。

Q:2年半働いたそうですが、実際にはどんな仕事をしましたか?

彼に付き添い世界中を旅しました。Off Whiteのコレクション、ストアインスタレーション、そしてShane Oliver(シェーン・オリバー)のHood By Air(フッド・バイ・エアー)のプリントデザイン開発の場など、さまざまなクリエイティブに携わりましたね。

彼が公私隔てなくたくさんの人に僕を紹介し、多様なクリエーションを見ることができ、感性が磨かれていくことを実感していました。特にLAベースのPyrex(パイレックス)、Fear of God(フィア・オブ・ゴッド)といったブランドが彼らのマーケットで展開する表現力やクリエイティブフリーダムに感銘を受けました。

実際に僕が手がけたのは、Kanye(カニエ)の仕事で、おそらく100のグラフィックデザインを毎日制作しました自分自身の才能を証明しようと臨んだ、そんな日々でしたね。

Q:仕事をするようになって、ヴァージルへのイメージが変わったということはあった?

彼の人柄は作品の通りだと思います。分け隔てなく、オープンで、柔軟性がある。ボスとしても一人の人間としても、彼の寛容さは素晴らしいと感じました。

Q:ヴァージル​​​​​​​ら学んだこととは?

本当に多くの経験をし、たくさん学んだ。最も重要だと思うのは、マルチファクターでありながらどのように作品の美学を一貫したものに保つのかという術です。それに彼はクリスマスだろうと本当に毎日働いている。自分の心に従いやりたいとことを徹底的に追求するべきだと彼を見て改めて確信しました。

Q:2015年、A-COLD-WALL*を立ち上げたきっかけは何だったのですか?

世界を旅して、特にLAベースのブランドのような自由なムーブメントがロンドンに欠けていると感じたからです

Q:フィルムメイキングやグラフィックデザインなど多才ですが、なぜファッションブランドにしたのですか?あなたにとってファッションとは?

服は僕がアイデアを明確に表現するもう一つの方法だと思っています。僕がファッションを愛するのはそのデザインプロセス。だから僕はデザイナーではなく、“ファッションデザイナー”だと言うようにしています。言葉で表現することができないいくつかのの点を結びつける、アイデアを明確にするものが芸術で、ファッションは芸術を表現力豊かに取り入れられるプラットフォームだと思います。

Q:A Cold Wall(冷たい壁)の意味は?

僕が公営団地の小石が打ち込まれた壁に触った時に感じたことです。ただ、その感覚は、上流階級の人でも大理石の壁を撫でた時に感じる気持ちと通ずるものがあると思っています。この感覚はイギリス特有のものだと思います。

イギリスの労働者階級の服っていうものの定義は長い間変わっていなくて、豊かなサブカルチャーがあります。僕はそのストーリーを、ブランドを通して語っていきたいです。

Q:A-COLD-WALL*の使命とは?

ストリートウェアブランドではなく、イギリスの労働者階級の文化的な解説をしたい。そのためには視聴などの身体的な体験をした上で、衣服によって完全に明確に理解されていることが本当に重要だと思っています。インスタレーションは、人々がそれを深く理解できる方法じゃないでしょうか。

僕らの世代にとっては、 例えば絵画のイメージとインスタグラムでその画像を見てと時、同じように作用すると思います。そこに置いている芸術に完全に浸ること、そしてそれに価値があることと感じることが重要です。服は常に着用可能だから触れることができるけど、アイデアが複雑なために、視聴などの体験を通して、服の背景にある文化まで伝えられると信じています。

Q:ブランドのコンセプトの背景には、あなたの生まれ育った環境と関係がありますか?

そうですね。僕は生れながらにして労働者階級の子供であり、育った環境にも影響を受けています。実際僕は、英国黒人のカリビアンで、ハイパーな男性社会がルーツであり、デザインや衣服を通して明確に表現されていますグラフィック、建築、壁っていうのもいかにもマスキュリンって感じですよね。

Q:現在も、ファッションデザイン以外に創作活動は行っていますか?

A-COLD-WALL*のフィルムメイキングや、そこで使うサウンドトラックもショーのBGMも、制作しています。南アフリカで活動するシンガーソングライターPetite Noir(プチ・ノワール)のプロジェクトで、楽曲制作などもしました。また、新たに取引が始まったショップでも、ファーストシーズンの商品が店頭に並ぶと同時にインスタレーションを設置してもらうようにしています。その国々、ショップの雰囲気をも見ながらインスタレーションの創作を行っています。

Q:マルチファクターとして、あなたが日頃から心がけていることはありますか?

インターネットやSNSを見ないことです。インスタグラムでさえ、他のデザイナーの作品は一切見ません。自覚があってもなくても、それらの画像は人々に影響を与えるし、僕はそれを望んでいない。SNSを辞めたり、“NO”っていう決断を下す必要があるといつの頃か感じていました。

あと、デザイナーよりもアーティストと話す時間を持つようにしています。ガーメントばかりを見つめるのではなく、アーティストとの会話で僕の中のアイデアを細分化し、新たなストーリーを生み出すことに力を入れているよ。

Q:最後に、どんなファッションデザイナーになりたいか、あなたの展望を聞かせてください。

僕は一瞬のバズを生むためにここにいるわけではなく、先30年のキャリアを持ちたいと思っています。有名人が僕の服を着ているとか、そういうことに夢中になりたくない。ロゴを使った特定のタイプのブランドの破壊的な動きがこの数シーズンありましたよね、僕はそれらの騒音から遠ざかりたいと思っています。

まだコミュニケーションをとる機会がなかった頃からあった伝えるべきことを、伝えていきたいと思っています。