インドのEコマースサイトMyntra (ミントラ)でベストセラーになっているTシャツはオリーブ色とブルー、イエローのカラーブロックで、これをデザインしたのは有名デザイナーではなく、アルゴリズムだ。

米労働省労働統計省によると、バイヤー職の雇用は今後10年間に渡って雇用全体が7%上昇していくのに対して2%落ち込んでいくとされている。

パーソナルスタイリングサービスのStitch Fix(スティッチフィックス)やBombfell(ボムフェル)、さらにファッションレンタルサービスのLe Tote(レトテ)はすでにアルゴリズムによって事業を展開しており、またそれなくしては成り立たないという。

センスあってこそのデザイナーやバイヤー、MDといったファッション業界の花形職種は今後人工知能に取って代わられてしまうのか?

ニューヨークでの最新の事例とともに追っていこう。

ファッション業界におけるアルゴリズムの発達

二つのアルゴリズムが互いに競合するように働きあうことによって、ミントラのベストセラー商品は生み出された。

最初は一つ目のアルゴリズムはデタラメなイメージを作り出すだけだった。もう一方はそのイメージと実際の商品を上手く見分けることができなかった。

次第に一つ目のアルゴリズムが実際の商品によく似たイメージを作り出すことができるようになり、さらに2つ目はその商品がどんなものか大体の特徴を見極めるように学習していく。

このような方法で進退を繰り返し、社内での人工知能の先例はミントラのCEOが成長率100%と満を辞して述べるデザインの数々をつくり出すようになった。

しかしながら、洋服のデザインはアルゴリズムがファッションリテール業界にもたらす変革の一端に過ぎない。

今日企業は人工知能を日常的に用いてどの洋服の在庫を持っておくべきか、そしてどの商品を客に進めるべきかを決定している。

そしてブルーカラーの雇用を削減してきたアメリカのファッション業界は、今度はAIがいかにホワイトカラーの仕事へも幅広く影響を及ぼすかそのまさに最初の実例になろうとしている。

出典:https://www.nytimes.com/2018/07/07/business/economy/algorithm-fashion-jobs.html

AIの導入による雇用の変化

「今後何年かの間により多くのそして幅広い業務はオートメーション化され、AIによって補われます。」

マサチューセッツ工科大学のエコノミスト、エリック・ブリニョルフソン氏とカーネギーメロン大学でコンピュータ科学を専門とするトム・ミッチェル氏は昨年『サイエンス・ジャーナル』誌でこう語っている。

彼らによれば影響を受けるほとんどの職業は、すっかり消えてしまうのではなく部分的にAIに取って代わられる。

ファッション業界はクリエイティビティという曖昧な感覚が、いかに実際的な判断ではないかを皮肉にも目の当たりにすると言うのだ。

AIの導入によって直に影響を受けるのはバイヤーや、どの商品を店舗の在庫に入れるかを決めるMDといった職種だろう。

バイヤー職の特徴といえばトレンドに敏感であり、かつ自身のセンスで消費者が欲しいものを予測することだ。

MDという職種はバイヤーの仕事を受けてどのような商品の組み合わせが適切かを見極めていく。サンダルとパンプス、フラットシューズそれぞれ何足ずつの投入が売り上げ目標を確実に達成するのか、といったように。

規模としてはまだ小さいものの最先端のアルゴリズムを導入し勢いのある企業では、消費者が何が欲しいか予測するのはバイヤーの努力や根性ではなく、それは紛れもなくAIなのだ。

出典:https://www.nytimes.com/2018/07/07/business/economy/algorithm-fashion-jobs.html

ファッションEコマースにおけるAIの活躍

パーソナルスタイリングサービスを提供するスティッチフィックスのケースを見てみよう。

スティッチフィックスのサービスでは、顧客はスティッチフィックスた洋服から欲しいものを選び、不要なものは返品できる。

顧客に送る商品をよりパーソナルなものにするためにプロフィールは保管され随時アップデートされる。

例えば新しい仕事を始めるのでワードローブを新調するといったように、どのくらいの数の顧客がどのようなシチュエーションにいてどのような購買活動をするのか、あるいは、それぞれ異なったプロフィールの顧客データに基づいてどれほどの数の衣服を欲しがっているのか予測する。

また、インドのオンラインファッションリテールミントラでは、バイヤーたちにアルゴリズムについて把握させている。

ここではアルゴリズムが売りたい商品に対してその類似商品の過去売上実績を参照し、確率を計算するのだ。

こういった傾向は一般的にハイステータスとされるバイヤーやMD職に今後暗い影を落とすだろう。

従来のファッションリテール企業のバイヤーチームでは、デザイナーごとや、あるいはカジュアル、ラグジュアリーといった各部門に分かれて編成されているか、ドレスやトップスといったようにカテゴリーごとに編成されてきた。

MDチームも同様に多くの雇用を必要とする場合が多い。

出典:https://www.nytimes.com/2018/07/07/business/economy/algorithm-fashion-jobs.html

これはチームの専門性を高めることでトレンドを感覚的に理解しやすくするためだ。

しかしながら、企業がアルゴリズムと膨大なデータを使用できるようになるとバイヤーの採用は減り、かつ感覚的な力量は不要となるのでバイヤーは幅広い部門を部分的に任せられるようになる。

オンラインファッションレンタルサービスを運営するLe Tote(レトテ)​では、1億ドルを売り上げる会社の規模に対して、バイイングチームはわずか6名しかいない。​​

共同創設者のBrett Northart(ブレット・ノーサート)氏は、ウィッシュリストに入れられたアイテムのデータやサイトの閲覧回数、最近の購買数といったデータに基づいてアルゴリズムがどのアイテムをストックするかを決定すると話す。

出典:https://www.nytimes.com/2018/07/07/business/economy/algorithm-fashion-jobs.html

AIと共存するファッション業界

男性向けパーソナルスタイリングサービスを手がけるボムフェルは、トップスから小物に至るまでバイヤーのNathan Cates(ネイサン・ケイツ)氏1人がすべての買い付けを行う。

アルゴリズムと膨大なデータがバイイングを補助しているので、ネイサン氏によれば従来のやり方よりもむしろずっと正確に需要を把握できるようになったという。

「私たちは顧客について正確に把握している。どこに住んでいて、どういった仕事についていて、彼らの服のサイズも正確にね。」

その一方で、買い付けの前にその商品の生地の肌触りを確かめ、試着することを欠かさない。

出典:https://www.nytimes.com/2018/07/07/business/economy/algorithm-fashion-jobs.html

今後バイヤーやMDといった職業が部分的にオートメーション化される一方で、AIの導入によって逆に必要とされる仕事も生まれてくる。

ボムフェルやスティッチフィックス、多くの競合他社においてスタイリストの採用を強化しているのだ。

彼らはアルゴリズムが選出する顧客へのオススメアイテムの中から、実際に顧客に送る商品を決める。

「もし顧客が送られてきた商品を前にしてそれに関心を示さなかったら僕は『この商品どうでしたか?』と聞いて、メモを取るんだ。」

そう話すのはTrunk Club(トランク・クラブ)のスタイリストJade Carmosino(ジェイド・カーモッシノ)氏だ。

肉体労働を要する作業の機械化から、いわゆるホワイトカラーの仕事までをも部分的に取って代わるAIが活躍するオンラインファッション業界。

そんな業界においてこれから必要とされる職業は、スタイリストのジェイド氏のように人工知能と共存し、顧客と人工知能の間に立つ人々によって担われるのだろう。

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